ソシオネクストがCadenceのAIエージェントを3nm SoCの物理設計に適用、最大5倍の生産性向上を期待

2026年10月20日、ソシオネクストは、Cadenceとの協業により、AIエージェントを活用した半導体設計手法の適用範囲を、先端3nmプロセスを用いた大規模SoCの物理設計に拡大したと発表した。

プレスリリース

発表によると、ソシオネクストはこれまでフロントエンド設計にAgentic AIを導入し、設計・検証作業の効率化やエンジニアの判断・分析支援、社内に蓄積された設計ノウハウの活用を進めてきた。

今回、AIの適用範囲をバックエンドの物理設計に拡大し、Cadenceの「InnoStack AI Super Agent」を大規模3nm SoCの設計に適用。今後、同技術を他のSoC開発プロジェクトにも展開していく計画だという。

「InnoStack AI Super Agent」は、Cadenceが2026年4月に発表したデジタル実装・サインオフ向けのAIエージェントで、論理合成、配置配線、タイミング解析、ECOなどの設計工程を対象とする。専門化された複数のAIエージェントがEDAツールと連携し、制約条件やフロアプラン、タイミング、消費電力、面積などを考慮しながら設計の最適化を支援する。(※関連ニュース)

ソシオネクストは、この「InnoStack AI Super Agent」の活用にあたり、RAG(検索拡張生成)、MCP(Model Context Protocol)、カスタマイズしたAIスキルなどを利用し、自社が蓄積してきた設計知識やエンジニアリングノウハウを物理設計のワークフローに組み込む。

具体的な適用領域としては、フロアプランニング、独自のタイミング解析チェック、将来的な設計チェックリストの自動化などを挙げている。

この取り組みの特徴は、単にAIによって個々の設計作業を自動化するだけでなく、熟練エンジニアが持つ設計知識や独自の設計手法をAIエージェントから利用できるようにする点にある。これまで個人や特定のチームに依存していた設計ノウハウを組織全体で共有・再利用することで、設計効率と品質の向上を図る狙いだ。

今回の発表に際して、ソシオネクストの代表取締役社長兼COOの吉田久人氏は、CadenceのAgentic AIワークフローの活用により、全体として最大5倍の生産性向上を期待しているとコメントしている。ただし、今回の発表では、実際に達成された生産性向上率や、個別の物理設計工程における定量的な評価結果は明らかにされていない。

ソシオネクストは今後、フロントエンド設計と物理設計におけるAI活用を連携させ、SoC開発フロー全体へのAI導入を進める方針。また、社内の専門知識を組み込んだ独自のAIエージェントやエンジニアリング・アシスタントの開発にも取り組むとしている。

Cadenceは今年、RTL設計・検証向けの「ChipStack AI Super Agent」、アナログ設計・検証向けの「ViraStack AI Super Agent」、デジタル実装・サインオフ向けの「InnoStack AI Super Agent」を相次いで展開し、半導体設計フロー全体を対象としたAgentic AIの製品群を拡充している。

国内でも本田技術研究所によるChipStackの評価や、RapidusによるInnoStackの活用に向けた協業など、先進的な設計企業によるAIエージェント導入の動きが広がっている。

今回のソシオネクストの取り組みは、こうしたAgentic AIが先端SoCの実際の設計ワークフローへ入り始めていることを示す事例と言えそうだ。今後は、個別工程の自動化による効率改善だけでなく、フロントエンドからバックエンドまでを横断するAI活用が、半導体設計の生産性をどこまで高められるかが注目される。

株式会社ソシオネクスト

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.10.21 NEW )