Cadence、アナログ・デジタル両領域で「AI Super Agent」を発表~仕様からサインオフまで、自律型設計フローを実現~
2026年4月16日、Cadenceはサンタクララで開催した自社イベント「CadenceLIVE Silicon Valley 2026」にて、設計プロセスを自律的に遂行する2つの新たなAIエージェントを発表した。
発表によると、新たに投入されるAIエージェントは、アナログ設計および検証を対象とする「ViraStack AI Super Agent」、デジタル・インプリメンテーションとサインオフを対象とする「InnoStack AI Super Agent」の2製品で、その概要は以下の通り。Cadenceは、これらAIエージェントと既に製品出荷しているデジタルRTL設計および検証向けの「ChipStack AI Super Agent」を組み合わせることで、仕様からサインオフまでチップ設計の全領域にわたる自律型設計フローを構築できるとしている。
ViraStack AI Super Agent:アナログ設計・検証
熟練設計者の専門知識に依存することなくカスタムおよびアナログ設計を自動化するAIエージェント。回路図作成、テストベンチ開発、回路最適化、レイアウト移行のスキルを備えている。豊富なアナログIPライブラリを保有しており、既存のIPライブラリを自律的にマイニングし、新しいプロセスノードや仕様へ回路を移行する能力に長けている。
InnoStack AI Super Agent:デジタル実装・サイオンオフ
論理合成、配置配線からサインオフ解析、ECO実行に至るまで、デジタル・インプリメンテーションとサインオフに特化したAIエージェント。Cadenceのインプリメント・ツールとサインオフ・ツールを基盤として、制約やフロアプラン、PPA目標の探索を自動化する。大規模な並列実験の実行により、手作業では到達困難な最適化解を導き出す。
またCadenceは、これら全てのAI Super Agentを統括する統合ヘッド・エージェント「AgentStack」も投入。「AgentStack」は、AI Super Agent間で知識とスキルを共有できる共通の端末ユーザー・インターフェースを提供する。同機能は、3D-IC設計、システム設計まで拡張可能と説明されており、近い将来、「3DStack AI Super Agent」と「SystemStack AI Super Agent」も投入されるようだ。(詳細については不明)
CadenceのAI Super Agent群は、汎用LLMの文章生成能力だけに依存するのではなく、複雑な設計目標を実現する工学的に妥当な結果へ導くことが可能。その中核技術となるのが、「Mental Models」と「Cadence Native Skills」で、「Mental Models」は、設計データ、仕様書、図面、ライブラリなどを束ねた知識グラフとして機能し、AIに「設計の正解」を正しく認識させる基盤となる。もう一つの「Cadence Native Skills」は、LLMにEDAツールの操作方法やログの解釈、トレース手法を最適化して教え込むプロンプト資産で、AI出力の品質と正確性を高める役割を果たす。
なおCadenceは「ViraStack AI Super Agent」と「InnoStack AI Super Agent」の発表に先駆けて、Google Cloudとの戦略的協業を発表。「ChipStack AI Super Agent」をGoogleのLLM「Gemini」に最適化し、クラウドネイティブな設計環境を構築。Google Cloudの計算リソースと最新AIモデルを組み合わせることで、検証作業のさらなるスケールアップを図るという。
Cadenceによると、「ViraStack AI Super Agent」と「InnoStack AI Super Agent」は、現在のところ先行顧客に向けて提供中。Cadenceは、AIをEDAツールに付加する段階から一歩進み、設計意図の理解、工程分解、EDA実行、結果の解釈までを担う“エージェント型EDA”へ本格シフトしている。AI Super Agent群によって、「完全自律型のエンドツーエンドのチップ設計」というパラダイムシフトが実現されると、慢性的な設計リソース不足に悩む半導体業界にとって大きな転換点となるだろう。

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.04.20
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