DAC 2026で見えたオープンソースEDAの今、AI、2nm PDK、教育へと拡大

2026年8月11日、オープンソース・ハードウェアの普及を推進する「CHIPS Alliance」は、DAC 2026で開催された「オープンソースEDA 交流会(BoF)」の模様を紹介した。

オープンソースEDA 交流会のアジェンダ
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同交流会には120人を超える参加者が集まり、OpenROADをはじめとするオープンソースEDAの最新動向から、2nmプロセス向けPDK、LLMを利用したチップ設計、設計者教育まで、幅広いテーマについて議論が行われた。BoFはDAC 2018から続くイベントで、今回が7回目となる。

CHIPS AllianceはLinux Foundation傘下の団体で、オープンソースのプロセッサコアやIP、EDAツールなどを開発・支援している。現在53の企業・団体が参加し、VerilatorやVerible、Caliptraなど多数のオープンソース・プロジェクトをホストしている。

オープンソースEDAが2nmへ

今回のセッションで興味深いのが、オープンソースEDAの対象が先端プロセスへ広がり始めている点だ。

Georgia Institute of Technologyからは「GT2N:An Open-Source 2nm Nanosheet PDK」と題して、2nm nanosheetプロセスを想定した研究用オープンソースPDKが紹介された。またUniversity of Southern Californiaからは、先端ノード設計をOpenROADで可能にする「SCCAD-3N and OpenROAD Enablement for Open-Source Advanced-Node Design」が発表された。

これまでオープンソースEDAというと、SkyWater 130nmなど比較的成熟したプロセスを使った研究・教育用途のイメージも強かった。しかし今回の発表を見る限り、その対象はFinFETやnanosheetなど先端プロセスを想定した研究へと広がりつつある。

さらにPrecision Innovationsからは「3D OpenROAD Database」のアップデートも紹介されており、オープンソースEDAの対象が従来の2D SoCから3D ICへ拡大していることも注目される。

LLM×EDAの「共通ベンチマーク」がテーマに

もう一つ大きなテーマとなったのがAIだ。

「AI-Assisted EDA and Physical Design Workflows」と題されたセッションでは、LLMを利用したRTL生成・設計自動化のためのオープンなベンチマークやデータ生成、オープンソースEDA環境を評価するためのベンチマーク標準などが議論された。

さらにLightning RoundではVygesが「Using a Semiconductor LLM to Drive Real DRC Sign-Off」と題し、半導体向けLLMを利用して実際のDRC Sign-Offを実行する試みを紹介している。

生成AIによるRTL生成やEDAツール操作そのものは珍しくなくなりつつあるが、ここで重要なのは「AIモデル」だけでなく、それを評価するデータ、ベンチマーク、設計環境をオープン化する動きが進み始めている点だ。

AIによるチップ設計を研究する場合、学習用データやEDAツールへのアクセス、PDK、評価基準などが必要になる。これらを自由に利用・変更できるオープンソースEDAは、Agentic EDAの研究開発にとって格好の実験基盤になる可能性がある。

Verilatorも商用検証環境に近づく

検証分野では、CHIPS AllianceのSV Tools Projectの一環としてAntmicroが進めている論理シミュレータ「Verilator」の機能拡張も紹介された。

「Verilator」は高速なオープンソースの論理シミュレータとして広く利用されているが、従来は基本的に「0」と「1」を扱う2-state simulationを中心としていた。現在は「0」「1」「X」「Z」を扱う4-state logicの実装やUVM互換性の強化が進められており、より本格的なSoC検証への利用を視野に入れた開発が進んでいる。

AI時代には設計者の教育も変わる

今回のBoFではツールだけでなく、人材育成にも大きな時間が割かれた。ETH ZurichのPULP Groupなどから、オープンソースEDAやPDKを大学教育に取り入れる取り組みが紹介されたほか、「From “How” to “What”: Rethinking Skill Sets in the Age of AI」と題したパネルディスカッションも開催された。

議論の中心となったのは、AIがチップを「どう作るか(How)」を自動化していく中で、エンジニア教育では「何を作るべきか(What)」を考える能力がより重要になるのではないか、という問題提起だった。

商用EDAとオープンソースEDAの境界も変わる

ここ最近の動きを見ると、オープンソースEDAは研究・教育用途だけの存在ではなくなりつつある。OpenROAD InitiativeにはGoogleがPrincipal Memberとして参加。またSiemensは7月、OpenROADをベースにAIを活用したチッププランニング技術を開発するPrecision Innovationsの買収を発表している。

つまり「商用EDAかオープンソースEDAか」という単純な二者択一ではなく、オープンソースの技術やデータ、ベンチマークを基盤として、その上に商用EDAやAIサービスが構築されるという新たなエコシステムが形成され始めている。

DAC 2026でAgentic AIが大きな話題となった一方、その裏側ではAIが学び、実験し、評価するための「オープンな設計基盤」の整備も急速に進んでいる。オープンソースEDAの存在感は、これからさらに大きくなりそうだ。

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CHIPS Alliance

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.08.24 )