Qualcommが高性能RISC-V IPベンダAkeanaを買収

米Qualcommが、高性能RISC-VプロセッサIPを手掛ける米Akeanaを買収したことが明らかになった。

今回の買収は、Akeanaの共同創業者兼CEOであるRabin Sugumar氏がLinkedInへの投稿で明らかにしたもので、同氏は2026年10月にQualcommのエンジニアリング担当VPに就任。Akeanaが開発してきたIPとエンジニアリングチームはQualcommに統合される。買収金額などの詳細は明らかにされていない。

Qualcommは2025年12月にも高性能RISC-Vプロセッサを手掛ける米Ventana Micro Systemsを買収しており、今回のAkeana買収は約10カ月間で2件目となる高性能RISC-V企業の買収となる。

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サーバーCPUの開発経験者が設立したAkeana

Akeanaは、2021年に設立された米国の半導体IPベンダ。創業メンバーはMarvellのサーバー向けプロセッサ「ThunderX2」の開発に携わったエンジニアらで、高性能CPUの開発に豊富な経験を持つ。

同社は2024年8月にステルスモードを終了し、事業を本格的に開始。それまでにKleiner Perkins、Mayfield、Fidelityなどの投資家から累計1億ドル以上の資金を調達していた。

Akeanaの特徴は、組み込み用途からデータセンターまでをカバーする幅広いRISC-VプロセッサIPの製品群にある。

主な製品は、以下の通り。

・Akeana 100シリーズ:マイクロコントローラや組み込みシステム向けの32ビットCPU
・Akeana 1000シリーズ:MMUを備えLinuxなどのOSにも対応できる64ビットCPU
・Akeana 5000シリーズ:そしてデータセンターや高性能コンピューティングをターゲットとする64ビットCPU

このうち最上位の5000シリーズは、アウト・オブ・オーダー実行方式を採用した高性能CPUで、ArmのNeoverseなどに対抗する製品として位置付けられている。

また、AkeanaはCPUコアだけでなく、キャッシュコヒーレント・インターコネクト、IOMMU、割り込みコントローラ、AI向け行列演算エンジンなどのシステムIPも保有。顧客が用途に応じたカスタムSoCを構築できる包括的なIPポートフォリオを展開していた。

Samsungの4nmプロセスによるサーバー向けRISC-Vチップも開発

Akeanaは2025年12月、Samsung Foundryの4nmプロセスを用いたサーバー向けRISC-Vテストチップ「Alpine」をテープアウトしている。

Alpineは、RISC-Vのアプリケーションプロセッサ向け仕様「RVA23」に準拠したチップで、5000シリーズをベースとする8個の64ビット高性能CPUコアを搭載。これに加えて、ベクトル演算に対応する64ビットCPUコアや制御用途の32ビットCPUコアを統合している。

また、コヒーレント・メッシュ構造によるCPU間接続やLPDDR5メモリインターフェース、PCIe Gen5などを搭載し、サーバー向けRISC-V SoCに必要な機能を実証するプラットフォームとして開発された。

2026年6月にはSamsung Electronicsとの協業も発表。Samsungの先端製造プロセスとAkeanaのプロセッサIPを組み合わせ、データセンター向けSoCやAgentic AI向けコンピューティングシステムの開発を促進する方針を示していた。

相次ぐRISC-V企業の買収、狙いはデータセンター市場か

Qualcommは2025年12月、高性能RISC-Vプロセッサの開発で知られるVentana Micro Systemsを買収した。同社はサーバー向けの高性能RISC-V CPU「Veyron」シリーズを開発しており、RISC-Vの命令セットアーキテクチャ(ISA)開発にも深く関わってきた企業だ。

QualcommはVentana買収の際、同社の技術と人材を活用し、RISC-Vおよび独自のOryon CPU技術の開発を強化すると説明していた。

今回のAkeana買収もその延長線上にあると考えられ、QualcommがRISC-Vを次世代CPU戦略の重要な選択肢として位置付けていることがうかがえる。特に注目したいのは、Qualcommが近年強化しているデータセンター市場への取り組みだ。

Qualcommは2026年6月、データセンター向けCPU「Dragonfly C1000」やAI推論アクセラレータを含む新たな製品ロードマップを発表。MetaとのデータセンターCPU供給に関する戦略的提携を明らかにしたほか、同年9月にはAmazonとのカスタムAI半導体開発に関する複数世代にわたる協業も発表している。

こうした状況を踏まえると、サーバークラスのRISC-V CPUや各種システムIPを保有するAkeanaの買収は、Qualcommのデータセンター向け半導体開発力を強化する取り組みとして捉えることができる。

ただし、QualcommがAkeanaの技術をどの製品に採用するかについては明らかにしておらず、既存のDragonfly製品への採用が決まったわけではない。

RISC-V市場におけるQualcommの存在感がさらに拡大

今回の買収は、RISC-Vを取り巻く半導体IP市場の動向という観点からも興味深い。

RISC-VはオープンなISAを採用しており、特定ベンダのアーキテクチャ・ライセンスに依存することなくCPUを開発できる。一方で、商用レベルの高性能CPUコアの開発には高度な設計技術と多大な開発投資が必要となるため、実用的な高性能CPU IPを提供できる企業は依然として限られている。

Qualcommは、VentanaとAkeanaという高性能RISC-V分野で実績を持つ2社を相次いで傘下に収めたことで、同分野における技術開発力を大幅に強化したと考えられる。

また、ArmベースのOryon CPUを主力とするQualcommにとって、RISC-Vという異なるアーキテクチャの技術を社内に蓄積することは、将来のCPU開発における選択肢の拡大にもつながる。

今回の買収以外にも、GlobalFoundriesによるMIPS買収、onsemiによるCodasipの事業買収など、かつては独立系スタートアップが中心だったRISC-V IP市場に、大手半導体企業による技術・人材の取り込みという新しい流れが生まれている。

オープンなISAを背景に拡大を続けるRISC-V市場において、高性能CPU IPを巡る技術開発競争と企業再編の動きが、今後さらに活発化していく可能性がある。

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