Qualcommが高性能RISC-Vプロセッサを手掛ける米Ventana Microを買収
2025年12月10日、Qualcommは、高性能RISC-Vプロセッサを手掛ける米Ventana Microの買収を発表した。
この発表におけるハイライトとしてQualcommが掲げたのは下記3点。
・RISC-V標準とエコシステムの開発におけるQualcommの取り組みとリーダーシップが強化される
・VentanaのRISC-V命令セット開発における専門知識は、QualcommのCPU エンジニアリング能力を強化する
・Ventanaチームは、カスタムOryon CPUテクノロジーの開発に向けたQualcommの既存の取り組みを補完
買収に関する取引条件などは明らかにされていないが、その買収目的は上記ハイライトからも分かる通り、RISC-Vへの関わりの強化。QualcommはこれまでもRISC-Vに関しては以下の通り積極的に取り組んできているが、今回の買収は特にRISC-VベースのCPU開発に狙いがあるようだ。
QualcommのRISC-V関連の主な取り組み
・RISC-V Internationalにおける活動
・Linux Foundation傘下のプロジェクト「RISE (RISC-V Software Ecosystem)」における活動
・Wear OS(スマートウォッチ向けOS)に対応したRISC-Vベースの「Snapdragon Wear」プラットフォームを開発
・Snapdragon内部でRISC-V MCUを活用
・自動車向けRISC-V合弁会社「Quintauris」の設立
Ventanaは2018年の創業以降、データセンター・クラスの高性能RISC-Vプロセッサを開発しており、2023年にはAI/ベクトル処理を強く意識した2世代目のデータセンター向けのRISC-Vコア「Ventana Veyron V2」を発表。これまで累計1億ドル以上の資金を調達したとされている。
VentanaもQualcommと同じくRISC-Vエコシステムに深くコミットしており、RISC-V Internationalで活動するほか、自社のRISC-Vコア・ソリューションの提供でIntel Foundry Services (IFS) やImagination Technologiesとも協業していた。
Qualcommは2010年代にArmベース・サーバーCPU「Centriq」を製品化したが市場を取れず撤退。その後、Armベース・サーバーCPUを目指していた「Nuvia」を買収したが、サーバーCPUの再製品化には至っていない。しかし今年5月に、NvidiaのGPU/ソフトウェア・スタックと緊密に連携するArmベースのサーバーCPUを開発すると発表し、サーバーCPU市場への再参入を明らかにしていた。
こういった背景や世相を考えると、今回のQualcommによるVentanaの買収は、RISC-VベースのサーバーCPU開発を狙ったものと考えてもおかしくはない。QualcommはArmに年間3億ドル近くのライセンス料とロリヤリティを支払っており、これまでの動きを見てもArmの代わりにRISC-Vを活用するモチベーションは非常に高い。




