MentorがRTLフィジカル合成ツールのOasys Design Systemsを買収

2013年12月14日、当該企業による公式な発表はなされていないが、複数の業界メディアがMentor GraphicsによるOasys Design Systemsの買収を報じた。


各メディアの情報によると、MentorによるOasys Design Systemsの買収は事実のようで、比較的安い金額で株式交換を中心に買収が実施された様子。

Oasysは2004年設立のEDAベンチャーで、RTLからの高速なフィジカル合成を実現する「RealTime Designer」を2009年にリリースし、論理合成とレイアウト設計とのイタレーションを大幅に削減する高速かつ大規模デザイン対応のツールとして、Xilinx、TI、Qualcomm、Juniper Networks、NetLogic、STMicroelectronicsなど大手への納入実績を積み上げていた。

2012年にはIntel、Xilinx、元CadenceのCEOである業界の投資家Joe Costello氏らによる出資を受け製品展開を加速。同年、前年比2倍以上の売上を達成した後、今年に入り、インプリメントを考慮したRTL最適化のための解析ツール「RealTime Explorer」、RTLと「RealTime Designer」の合成したネットリストの等価性検証ツール「Oasys RealTime Parallel EC」を相次いで発表、「RealTime Designer」の機能強化も実施していた。(「Oasys RealTime Parallel EC」には、OneSpin Solutionsの提供する機能等価性検証ツール「OneSpin 360 EC」の技術が利用されている。※関連ニュース

Mentorは古くから「Leonardo」、「Precision Synthesis」など論理合成ツールを保有していたが、現在の先端チップ設計向けに耐えうる技術は無く、自社の配置配線ツール「Olympus-SoC」を売る上でも論理合成の欠落は大きなネックとなっていた。そういった意味で、MentorがOasysを買収するメリットは大きく、今回の買収でOasysの技術を手に入れる事が出来れば、論理合成から配置配線に繋がるRTLからの一貫したインプリメント・フローを実現することが可能。更に高位合成ツール「Catapult」を委ねたCalypto Design Systemsと連携すれば、C/C++/SystemCからのインプリメント・フローも実現可能となる。

先端チップのインプリメント・ソリューションに関しては、業界トップのSynopsysに対してARMやTSMCの顧客を中心に巻き返しを図るCadence、新興勢力として存在感を増すATopTechという構図が出来上がりつつあったが、今回のMentorのOasys買収によりまた業界の構図が大きく変わる可能性が出てきた。


= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2013.12.16 )