【EDSF2011】システムLSI設計の今後-22nm時代に向けて-低電力対策
パシフィコ横浜で開催されたElectronic Design and Solution Fair 2011のレポート。
初日の1月27日、会場内の特設ステージで「システムLSI設計の今後-22nm時代に向けて-」と題したパネル・ディスカッションが行われた。
同セッションでは、22nm時代に向けた設計課題として、ばらつき、低電力、信頼性の3つを取り上げ、3人のパネリストがそれぞれにその重要性と対策を語った。
ここでは、低電力化の重要性と対策に関する大阪大学橋本准教授の話を紹介する。
■低電力化の重要性と対策
橋本 昌宜氏 大阪大学 情報科学研究科情報システム工学専攻 准教授
橋本氏の話した低電力化の重要性は、恐らく会場に集まった設計者にとって最も身近なもので、その主張も非常に分かりやすかった。
橋本氏は、プロセスの微細化に伴い熱密度・放熱コストが高まり、低電力化しないと微細化による高速化、高集積化といったメリットが生かせなくなっている現状を指摘。また、電池駆動デバイスの増加、グリーンITへの期待、新たなアプリケーションの創出、3D-ICの実装という面でも「低電力」は必要不可欠。半導体産業は低電力から逃れられないと語った。
面白かったのは、低電力は新たなアプリケーションの創出に繋がるというくだりで、橋本氏はその一例として、自身の開発した低電圧動作の16ビットRISCプロセッサを紹介。電源電圧スケーリングにより、動作速度は非常に遅いが超低消費電力を実現できるとし、そういった技術は、デバイスの長期動作を必要とするバイオメディカル、構造物モニタリング、センサーネットワークなどに役立つと紹介した。(図1、図2、図3)
図1
図2
図3
低電力への対策としては、まず「過大なマージンを無くす」ことが重要で、その為には「チップ毎の特性の違い」を考慮した設計、「製造後にどうチップが制御されるか?」を想定した設計が必要と指摘。ワーストケース設計からの脱却を実現するEDA技術に期待を寄せた。(図4、図5)
図4
図5
橋本氏は講演の最後に、低電力技術が実現する究極の形として、不揮発性素子を組み込んだロジック回路によって、コンピューティング時のみ電力を消費するという「ノーマリーオフコンピューティング」を紹介。低電力設計こそが競争力として話を終えた。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2011.01.31
)