【#47DAC】今年は半導体ファウンドリの影響力とESL関連の話題が目に付く
カリフォルニア州アナハイムで開催された、第47回DAC(Design Automation Conference)のレポート。
一昨年に続きアナハイム開催となった今年のDAC。不況の影響がやはり大きいのか、来場者は遂に6000名レベルに。(カンファレンス、展示会、その他来場者全ての合計)
来場者減と並行して展示会に出展する企業数も年々確実に減少しており、今回は計174社が出展、うち初出展24社という内訳だった。
カンファレンスでは、148の論文発表、9つのSpecial Session、35のTechnical Session、6つのWorkshopが行われ、論文発表数だけは昨年の計117を上回った。Best Paperには、カーネギーメロン大のXin Li氏が発表した「Bayesian Virtual Probe: Minimizing Variation Characterization Cost for Nanoscale IC Technologies via Bayesian Inference」が選ばれた。全体的にカンファレンスでは、アジア系(特に中国系)の発表者数がかなり増えた印象だった。
今回の47DACで印象に残ったのは、大手半導体ファウンドリの影響力とESLブーム。
半導体ファウンドリ最大手のTSMCに続いて、今年はGLOBALFOUNDRIESが初出展。GLOBALFOUNDRIESはスポンサーとして上から2番目の「Gold Exhibiter」として、会場内計4ヶ所にブースを構え、バックエンド系を中心に20社近いパートナーEDAベンダとの共同展示を実施。同社のCEO Douglas Grose氏は、基調講演のトップ・バッターを務め、チップ開発の革新には、EDAベンダ、IPベンダ、設計サービス会社とのエコシステムが必要不可欠とし、電機メーカーに対し製造パートナーとの関係の再定義を呼びかけた。
TSMCは、DAC開催前の6/8に新たな2つのリファレンス・フローを発表。一つは刷新を重ねているデジタル・インプリメントの「リファレンス・フロー11.0」で、もう一つはアナログ/ミックスド・シグナル設計向けの「AMSリファレンス・フロー1.0」。この発表が出るや否やCiranova、Synopsys、Apache、Solid、Magma、Mentor、SiloconFrontline、Pyxis、EdXact、Fotre、CadenceなどEDA各社(順不同)は、こぞって同フローに自社製品が採用された事を発表し、それら発表の多さが逆にTSMCの存在感と影響力を浮き彫りにした。
また驚かせたのは、今回のTSMC「リファレンス・フロー11.0」に初めてESLツールが加わった事で、TSMCはPPA(パワー、性能、面積)の向上に向けてバーチャル・プラットフォーム、高位合成、ESL to RTL検証などを導入。TSMCのエンジニアリング・マネージャーのAshok Mehta氏によると、PPAの中でも特にパワー最適化に関してESLツールに期待しているという事で、現時点でSynopsysのバーチャル・プラットフォームやTLM検証ソリューション、Cadence、Mentor、Forteの高位合成、CarbonのESLモデル生成ツールなどが採用されて入ることが明らかになっている。また、同フローには、ArterisのSoCインターコネクトIPも含まれている。
TSMCのリファレンス・フローにも現れているように、ESLはEDAソリューションの中で一つの大きなブームと言えるカテゴリとなっており、今回の47DACでも話題の中心に。未だESL手法そのものを採用していない企業も多いようだが、採用している企業はかなり積極的にESLツールを運用しているようで、Mentor主催のESL Symposiumでの情報によると、2003?2008年の5年間におけるEDAカテゴリ別売上成長率は、首位がDFM(13.3%増)で2位がESL(12.5%増)という話。多数開催されていたESL関連セッションを聴いた限りでは、中でも高位合成(HLS)の利用は確実に広がっている様子で、未だデファクトと言えるHLSは無いが、SynopsysがSynfora買収でHLS市場に再参入した事で、大手3社+老舗HLSベンダによる市場争奪戦は更に激化すると思われる。
また、かのESL推進論者Gary Smith氏は、DAC初日のパネル・セッションで今年もESLの重要性を強調。チップの開発コストを引き下げる一つの解としてESLツールの有効性を指摘し、ForteのCynthesizer、CadenceのCtoS、MentorのVista、BluespecのESLツール、Synopsysのバーチャル・プロトタイプ環境などを注目のESLツールとして紹介していた。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2010.06.23
)