【DACレポート】DFMの波は一段落、ESLは依然混沌、各種検証ソリューションが厚みを増す>>Jan M.Rabaey氏のキーノートスピーチ「EDAの未来はBDA」

2007年6月7日、第44回DACは「Best Peper」が発表され展示会が終了。残すは最終日のチュートリアルのみとなった。

今年のベストペーパー、フロントエンド部門は、UCバークレー、Cadence Lab、GM Resarchグループの発表した「Period Synthesis for Hard Real-time Distributed Automotive Systems」。バックエンド部門は、ミネソタ大学グループの発表した「Interdependent Latch Setup/Hold Time Characterization via Euler-Newton Curve Tracing on State-Transition Equations」という論文だった。

今年のDACは、オープニングのキーノート・スピーチが米ゼネラルモーターズのLawrence D. Burns博士、カンファレンスや展示会場内でも「Automotive」関連のセッションやパネル・ディスカッションが多数行なわれ、ベストペーパーも「Automotive」関連(フロントエンド部門は)と、車載エレクトロニクス市場の拡大に対する期待や課題、求められる技術が随所で語られていたが、展示会で「Automotive」市場を意識した展示を行なっていた企業はごく僅か。ここ数年の大きな波となっていた「DFM」関連も一段落といった雰囲気で、DFM系の話題となると大手以外は「BBC」=Brion、BlazeDFM、ClearShape、の3社に集中していた。

また、「DFM」と並ぶもう一つの波「ESL」については、新興ベンダが多数存在するも、ブレイクスルーを感じさせる目立つ動きは無く、依然混沌とした状態。じわりじわりと実績を積み上げているベンダも複数あるが、CoWare、Vast、Forteといった老舗ESLベンダに追いつくには、まだ時間が掛かりそうな様子。

一方、検証ソリューション関連では、Aldec、ArchPro、Atrenta、Averant、Axiom、Breker、Certess、CLK、EVE、GateRocket、Incentia、Jasper、JEDA、Liga、OneSpin、ProDesign、Sequence、Synplicityなど、論理検証、ハードウェアベース検証、タイミング検証、その他、各分野において新製品・新機能の発表が多数あり、マルチCPU対応による処理の高速化を実現しているツールが多かった。

その他、アナログ関連の新興ベンダや各種設計/検証IPを取り扱うメーカーが以前よりも増えた印象が強く、Power関連では、各種セッション、ミーティングが多数行なわれており、DAC直前に発表されたシノプシス&ARMの「ローパワー・メソドロジ・マニュアル」が注目を集めいた。

尚、6月7日に行なわれた、今回のDACの最後を飾るキーノートスピーチでは、GSRC Director兼BWRC Scientific Co-Directorの「Jan M.Rabaey」氏が、「Design without Borders -- A Tribute to the Legacy of A. Richard Newton」と題した講演を実施。
今年1月2日に他界した業界の重鎮「Richard Newton」氏の「EDAの未来はBDA(Bio Design Automation)にある」という考え方を紹介し、Nano/Bio分野におけるデザインの現状を解説した上で、「現在は異なるデザイン領域を対象とする、Nano/Bio分野のデザインとマイクロエレクトロニクスのデザインは、いずれ境が無くなる」、「我々のデザインメソドロジの真の成功は、スケーラブルなデザイン・プラットフォームを築き上げる事で、EDAの遺産は、ムーアの法則が停止した後もNano/Bio分野において残っていくだろう。」と語り、EDA技術の進むであろう未来像を示唆。亡き盟友Richard Newtonの功績に感謝の意を述べ、「Exiting Time Again・・・」と締め括った。

※GSRC:Gigascale Systems Research Center
※BWRC:Berkeley Wireless Research Center

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2007.06.08 )