【DACレポート】今年はESL元年?米国でもESL採用の動きが本格化

2008年6月8日?13日、カリフォルニア州アナハイムにて今年が45回目となる、EDA業界最大の学会及び展示会「Design Automation Conference」が開催された。

今年のDACは、ケイデンス不参加の影響も少なからずあるのか、はたまた世界的な経済不況の影響が大きいのか、来場者数の少なさが目立ち、業界関係者の間では「今年は人が少ない」というのが挨拶言葉に。中でも日本からの参加者が昨年よりもかなり減った様子であった。

そんな状況もあり、展示会場は全体的に「熱気あふれる」とは言い難い、ある意味落ち着いた雰囲気に終始していたが、「ESL」関連の話題は昨年よりも活発化。初出展の5社を含め多数のEDAベンダが多様なソリューションをアピールする傍ら、連日ESL関連のセッションが行われ、中には立ち見の出るセッションも。DACに合わせてESL言語SystemCのTLM2.0仕様がリリースされた事もあり、業界におけるESLソリューションの加速が色濃く現れていた。

また、展示会初日に行われたパネルセッション「Trends and Whats Hot at DAC」では、業界一のアナリストGary Smith氏がITRSのフォーキャストを示し、設計コストは2008年以降システムレベルへと大きくシフトし、2020年にはその大半を占めると指摘。ESL関連のトピックスとして、マルチコア・プログラミング・ツールやCに代わる新たな組込み言語の必要性、検証コストを半減する新技術「インテリジェント・テストベンチ」、バーチャル・プラットフォーム市場の激化やIPベース設計を実現するための高品質なIPの重要性などを挙げていた。
※ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductors(国際半導体技術ロードマップ)

幾つかのESL関連セッションを聴講し強く感じたのは、ESLに対する設計者側のモチベーション・アップ。これまでは、どちらかと言うとEDAベンダの主導でESLが語られる事が多かったが、今回のDACでは各セッションで設計者がESL採用事例を積極的に語るケースが多く、STマイクロやTIなど従来からESLにポジティブな企業に加え、Intel、NVIDIA、Qualcommといった米国大手からも社内のESL事例が複数紹介された。

今年のDACは昨年同様、「これ!」と一言で表現できる明確なトレンドは無かったが、システムの多様化/複雑化、マルチコア化を背景に、長い間話題ばかりが先行していたESL技術が北米市場でも実用フェーズで本格始動している様が確認できたのは事実。将来的には2008年が「ESL元年」と称されるかもしれないが、同分野においては、以前から積極的に取り組んでいる日本企業の方が経験・ノウハウが圧倒的に豊富なはず。今回のDACでも随所で日本企業からのスピーカー、オーガナイザーが存在感を示していたが、ESLを主導する立場として、今後の日本企業のリーダーシップに期待したい。

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2008.06.13 )