Quadric、IFC主導でシリーズCを4,800万ドルに拡大、エッジAI向けプロセッサIPの市場開拓を加速
2026年7月14日、エッジAI向けプロセッサIPを手がける米Quadricは、シリーズCラウンドで総額4,800万ドル(約77億円)を調達したと発表した。
発表によると今回の資金調達は、2026年1月に発表されたシリーズCラウンドのセカンド・クローズに当たる。IFC(国際金融公社、世界銀行グループ)の主導により、当初3,000万ドルだった調達額が4,800万ドルに拡大した。これにより、Quadricの累計調達額は9,000万ドルに達した。
今回の資金調達で注目されるのは、半導体スタートアップへの投資ではあまり名前を聞かないIFCが、ラウンドを主導した点だ。
IFCは、新興国や途上国における民間セクターの発展を支援する世界銀行グループの開発金融機関で、金融、インフラ、エネルギー、製造業などを主要な投資対象としている。半導体スタートアップへの直接投資は珍しく、今回の出資は、投資案件としてQuadricの事業成長性に加え、新興国におけるAIインフラの構築に同社の技術を活用可能と判断したようだ。
Quadricによると、同社は従来から新興国市場を事業対象としており、IFCの出資によって基本的な事業戦略が変わるわけではないという。一方で、今後は代理店などのパートナーを通じ、新興国市場への展開をさらに加速する見通しだ。
自動車やPCに加え、ロボット、ウェアラブル市場を開拓
Quadricは調達した資金を、顧客サポート体制と市場開拓チームの拡充に活用する。
同社は現在、自動車、コンシューマ機器、エンタープライズ分野を中心に顧客を獲得しており、日本ではデンソーや京セラが採用企業として知られている。今後はこれらの分野に加え、ヒューマノイド・ロボット、ウェアラブル・デバイス、ネットワーク機器などを重点市場として、新規顧客の開拓を進める計画だ。
Quadricによると、製品寿命が長く、高価で複雑な製品ほど、同社のプロセッサIPに対するニーズが高いという。同社のプロセッサIP「Chimera」は、特定の処理に特化した機能固定型NPUとは異なり、プログラマブルな構成を採用している。製品の出荷後も、新しいAIモデルやアルゴリズムに対応できるため、長期にわたって製品の機能を更新できる点が特徴だ。
Quadricによると、多くの顧客が「Chimera」のプログラマビリティを高く評価しており、競合製品との差別化を実現するために採用を決めているという。直近では、大手PCメーカーがAI PC向けチップに「Chimera」を採用し、2026年5月にテープアウトを完了した。「Chimera」を搭載するAI PCは、2026年秋にも市場投入される予定だ。

350種類以上のAIモデルをサポート
「Chimera」は、コンピュータビジョン、オンデバイスLLM推論、VLA(Vision-Language-Action)モデルなどを含む、350種類以上のAIモデルをサポートしている。このモデルの多さも「Chimera」の優位点の一つで、Quadricのソフトウェア開発環境を利用することで、SoC設計チームは様々なAIアプリケーションをPythonまたはC++で記述し、「Chimera」上に容易に実装できるという。
エッジAI市場では、AIモデルの進化に合わせてハードウェア側の処理内容を更新できる柔軟性が重要になりつつある。プログラマブルなプロセッサIPを提供するQuadricが、今後エッジAI市場でどう浸透していくか。また、新興国のAIインフラをどこまで変えていくか、今後の展開が注目される。

Quadric
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.07.22
)




