2400万ドルを調達したAIスタートアップArchitect Labsは、チップ設計の完全な自動化「デザインレス」を目指す
2026年6月18日、AIスタートアップの米Architect Labsは、シード資金2,400万ドルの調達を発表した。
Architect Labsは、コンピューティング・システム向けの基盤AIラボを標榜するスタートアップで、創業者兼CEOのEbrahim Hussain氏はスタンフォード大学での研究経験を持ち、AppleおよびTeslaのシリコン開発チームに在籍した経歴を持つ。同社の創業チームには、MetaのAIシリコン、Intelの初期ニューロモルフィック・チップ、Anthropic、xAI、Google DeepMindなどでAI研究に関わってきたメンバーが名を連ねている。Architect Labsによると、創業チームはこれまでに累計80件以上の量産チップのテープアウトに関与してきたという。
同社が取り組むのは、AIによる完全に自動化された半導体設計で、半導体業界を「デザインレス(Designless)」にすることを目指している。Architect Labsは、既存のEDAフローにAIエージェントを後付けするのではなく、AIを設計プロセスの中心に据えた新しい設計フローをゼロから構築するという、半導体設計プロセスの抜本的な再構築を打ち出している。対象とするのは、仕様策定、アーキテクチャ探索、RTL設計、検証、レイアウトに至るまでのハードウェア設計プロセスであり、将来的にはソフトウェア、ハードウェアを同時に最適化するHW/SW協調設計も視野に入れている。
Architect Labsは、今日のチップ設計手法は数十年前に確立された設計フローとツールを継ぎ足しながら使い続けている状態にあると指摘、現在盛んに行われている後付けで局所的なAI活用では、AI時代の要求に対応しきれないと主張している。同社は、今日のチップ設計が直面する課題として、以下を挙げている。
時間(Time):コンセプト立案から実際のシリコン完成まで、通常2〜5年を要する。
コスト(Cost):動作するチップが得られる前に、数千万ドルから数億ドル規模の投資が必要になる。
人材(Talent):高度な設計スキルを持つ専門家は限られており、その多くは一部の大手企業に集中している。
ツール(Tooling):現在の設計フローはAI時代の速度ではなく、40年前の思想に基づき人間の作業ペースを前提に作られている。
かつてファウンドリの登場により、製造設備を持たないファブレス半導体企業が生まれた。Architect Labsは、これと同様の変化を今度は設計レイヤーで起こそうとしている。すなわち、顧客企業が大規模なチップ設計組織を自社で抱えなくても、自社のワークロードに最適化されたカスタム・シリコンを入手できる世界を目指すという構想である。
この狙いは、AIラボ、ファブレス半導体企業、OEM、防衛関連企業、ASIC設計パートナーなど、独自のワークロードや製品差別化にカスタム・シリコンを必要とする企業を対象としている。Reutersによると、Architect Labsは、BroadcomやMarvellが手がけるようなカスタムチップ設計市場に対し、AIによって設計の期間とコストを引き下げることを目指しているという。
今回のシードラウンドはKindred Venturesが主導し、Race Capital、TQ Ventures、Together Fundが参加した。また、OpenAI、NVIDIA、Google DeepMind、Synopsys、Keysightなどのエンジニアリング・リーダーに加え、Google DeepMindのJeff Dean氏らもエンジェル投資家またはアドバイザーとして関与している。
なお、Architect Labsはすでに半導体企業との協業を開始しており、AIが生成した設計について、年内に先端ファウンドリ・ノードでテープアウトの予定。
EDA業界では近年、RTL生成、検証、デバッグ、制約生成、設計探索などに生成AIを活用する動きが急速に広がっている。ただしArchitect Labsの主張は、既存EDAツールの効率化にとどまらず、設計方法論そのものをAIネイティブに再構築するという点で、従来のAI for EDAスタートアップとはやや異なる。
Architect Labsの取り組みは、EDA業界にとって、単なるAI機能追加にとどまらず、「誰が、どのような方法でチップを設計するのか」という設計産業の構造そのものを問い直す動きとして注目されるだろう。

Architect Labs
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.06.23
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