Synopsys、Ansys統合による「Multiphysics Fusion」第一弾を提供開始
2026年6月17日、Synopsysは、Ansysのマルチフィジックス解析技術をSynopsysのEDAフローに統合した「Multiphysics Fusion」ソリューションの提供開始を発表した。
今回発表された「Multiphysics Fusion」ソリューションは、SynopsysによるAnsys統合の具体的な成果を示すものであり、先端AI/HPCチップやマルチダイ設計において顕在化している電源、熱、電磁界、応力、フォトニクスといった物理課題を、設計フローの中で直接扱うことを狙ったもの。第一弾とされる今回の「Multiphysics Fusion」ソリューションは、以下の4領域を対象とする。
・タイミング・サインオフ
・デザイン・クロージャ
・マルチダイ設計
・アナログ/フォトニクス
Synopsysは、「PrimeTime」、「PrimeClosure」、「3DIC Compiler」、「Custom Compiler」、「OptoCompiler」といった同社の主要EDA製品に、Ansys由来の「RedHawk-SC」、「RedHawk-SC Electrothermal」、「HFSS-IC」、「Lumerical」などの解析エンジンを組み合わせることで、従来は個別に実施されがちだった物理解析を、設計およびサインオフの流れに組み込む。サインオフ精度のマルチフィジックス解析をEDAフロー内で使うことで、設計マージンを多めに取る「過剰設計」から設計中に物理現象を織り込む「協調設計」へと移行し、先端プロセスや高密度マルチダイ設計における物理要因の課題を解決するというのがSynopsysの狙いだ。
特に注目されるのは、「PrimeTime」と「RedHawk-SC」、「RedHawk-SC Electrothermal」、「StarRC」、「HFSS-IC」を連携させ、IRドロップ、熱、応力、電磁界の影響をタイミング解析に反映するタイミング・サインオフ向けの統合で、Synopsysはこの統合によりSPICE精度のマルチフィジックス・タイミング解析を最大3倍高速化できるとしている。

マルチフィジックス・ソリューションとしては、競合のCadenceがチップ、パッケージ、ボードと、システムを横断する統合解析プラットフォームを展開しているが、Synopsysが今回発表した「Multiphysics Fusion」は、サインオフ精度の物理解析を既存EDAフローに融合することを主眼としており、思想と目指す方向性が若干異なる。
とは言え、Synopsysにとって今回の発表は、Cadenceが先行してきたマルチフィジックス/システム解析領域に対し、Ansysという強力な解析資産を武器に本格参入を宣言するもので、EDA業界における競争軸が、従来の論理合成、配置配線、タイミング解析といった個別EDAツールの性能競争から、物理シミュレーションやシステム解析を含む統合設計環境の競争へ移りつつあることを示している。

日本シノプシス合同会社
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.06.18
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