SiemensがRTL設計/検証のエージェント型AIワークフローを提供する「Questa One Agentic Toolkit」を発表

2026年2月27日、Siemens Digital Industries Softwareは、同社の検証環境「Questa One」向けの新製品「Questa One Agentic Toolkit」を発表した。

プレスリリース
https://news.siemens.com/ja-jp/questa-one-agentic-ai-toolkit/

「Questa One Agentic Toolkit」は、より短期間かつ高品質なRTLサインオフを実現する、検証環境「Questa One」向けのオプション機能である。RTL設計、検証プランニング、検証実行、デバッグ、修正までを一連のマルチステップ作業として扱い、エージェント型AIワークフローで支援する。

本ツールキットには、ドメインに特化した5つのエージェント型AIが用意されており、自律的に推論するパートナーとしてエンジニアと協調し、RTL設計/検証の一連の作業を支援する。これらのエージェントを用いたワークフローは、NVIDIAの推論用オープンモデル「Llama Nemotron」と推論環境デプロイ用の「NIM(NVIDIA Inference Microservices)」を活用して構築されており、エージェント型AIが設計、テストベンチ、仕様書、テストプランの間のコンテキストをリアルタイムで理解することが可能。Siemensが独自に用意したオープンソースの標準プロトコルに準拠した「MCP(Model Context Protocol)」を通じて「Questa One Verification IQ」、「Questa One SFV」、「Questa One Sim」などと直接連携し、ドメイン専門家が整備したプロンプト・ライブラリで補強されるという。

用意されるエージェントは以下の通り。

RTL Code Agent
自然言語から合成可能なRTLを生成しつつ、コーディング違反の検出と修正提案を行う
Lint Agent
リント解析の最適設定、設計エラーやスタイル違反の検出に加え、AIによる修正や例外設定の提案も提示
CDC Agent
CDC検証を最適に構成して実行し、結果に基づく設定の微調整提案や修正/例外設定を支援
Verification Planning Agent
仕様を解析して検証プランを自動生成。セクション構成や機能記述、シナリオ、チェック戦略の作成をAIが支援し、人間が段階的にレビュー/承認する
Debug Agent
波形、アサーション、カバレッジ、ログを相関させ、疑わしい遷移や故障メカニズムの候補、デバッグ・シナリオを提示して根本原因解析を加速

なお、「Questa One Agentic Toolkit」は、Siemensの既存のエージェント/生成AI基盤「Fuse EDA AI system」とシームレスに連携し、Fuse環境において追加機能として活用することが可能。それにより、「Questa One」に加え、DFT向け「Tessent」やハードウェア支援検証環境「Veloce CS」などにも対応させ、複数ツール間のオーケストレーションにより、設計・検証全体へAI機能を広げていくことが可能だという。

その一方で、Siemensは「Questa One Agentic Toolkit」のフレームワーク非依存を掲げており、他のエージェント基盤とも統合できるとしている。例えば、GitHub Copilot、Claude Code、Cursor、Clineといった主要AIコーディング環境と連携し、CLI環境やVS-CodeなどのIDEで使用できるという。

エージェントAIベースのRTL設計/検証向けEDAツールは、現在EDA市場の中で最も注目されている分野で、大手EDAベンダだけではなく新興EDAベンダも次々と新たな製品を市場投入している。そんな中でリリースされたSiemensの「Questa One Agentic Toolkit」は、重要な意思決定ポイントで人間が介在する「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop)」という人間中心のエージェント型ワークフローを全面に打ち出しているのが特徴的。AIによる設計/検証の加速を実現しつつ、品質と信頼を支えるエンジニアの専門知識と判断力を維持するというポリシーを掲げている。また、フレームワーク非依存で、特定のベンダー環境に縛られることなく利用できるという柔軟性も他社製品との差別化要因として挙げることができるだろう。

RTL検証に関して独自の思想とソリューションを持つSiemensが満を持して発表したエージェントAI型の新製品「Questa One Agentic Toolkit」。すでに早期アクセスプログラムを通じて提供を開始したとしており、今後の適用事例やユーザーからの評価が注目される。

Siemens Digital Industries Software

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.03.04 )