ルネサスがISSCC 2026で発表した車載SoC向けの要素技術

2026年2月18日、ルネサス エレクトロニクスは、サンフランシスコで開催中の「ISSCC 2026(International Solid-State Circuits Conference)」において、車載SoC開発に関する3つの独自技術を発表した。

プレスリリース

発表によるとルネサスが今回開発したのは、車載マルチドメインECU向けのSoCを実現するための3つの要素技術で、その概要は以下の通り。これらは、次世代の車載E/Eアーキテクチャで中核となる高いAI処理能力と、チップレットによる拡張性、そして車載で必須の機能安全を同時に満たすことを狙う。

1. ASIL D対応に向け、チップレット間の干渉を防ぐ仕組みを考案

チップレット構成でもASIL Dをサポートすることを狙い、ダイ間接続規格「UCIe」に独自の「RegionIDメカニズム」を組み合わせた新アーキテクチャを考案した。

UCIeではRegionIDをダイ間で直接運べないため、RegionIDを物理アドレス空間にマッピングし、UCIe内にエンコードして伝送する方式を新たに設けた。これにより、MMUやリアルタイムコア側で安全なアクセス制御が可能となり、チップレット構成でも機能安全要件を満たせるという。評価の結果、SoC内部の伝送上限に迫る性能を確認したとしている。

2. クロック遅延とテスト難を同時に解消

AI処理に用いるNPUの大型化に伴い、共有クロック源から各回路へ至るクロックレイテンシ(遅延)が増大する課題に対し、従来はモジュール単位で配置していたCPG(Clock Pulse Generator)を分割し、サブモジュール階層にmini-CPG(mCPG)を配置する構成へ刷新した。これによりレイテンシを低減し、タイミング要件を満たしたという。

一方で、mCPGを多層化するとテストクロック同期が難しくなるという課題に対しては、階層型CPGへテスト回路を統合し、ユーザークロックとテストクロックを単一経路化した。さらにテストモードでは、上位・下位mCPGを同一クロック源で同期させて単一位相として扱うことで、テスト時と実動作時の挙動差を排除した。

3. きわめて細粒度のパワーゲーティングで省電力と安全性を実現

高性能化に伴う電力消費、電圧降下という課題に対して、90以上の電源ドメイン高度なパワーゲーティング技術を開発。動作状況に応じて数mWから数十Wまで精密な制御を可能としたほか、「リング型」、「行配置型」、2段構えのPSW(パワースイッチ)により、電圧降下を大幅に抑制した。

機能安全(ASIL D)の観点では、DCLS(Dual Core Lock Step)構成において、マスターとチェッカーを独立したPSWおよびコントローラで制御し、片側故障時でも確実な異常検知を可能にした。さらに電圧監視にはデジタル電圧モニタ(DVMON)を採用し、エージング耐性も1.4mV向上させたという。

ルネサスは、これらの要素技術をSDV向けのハイエンド3nm SoC「R-Car X5H」に採用している。同SoCはマルチドメインECU向けに開発された製品で、最大400TOPSのNPUを搭載。1チップでADAS、IVI、ゲートウェイなど複数ドメインを同時に動作させることが可能で、車載コンピューティングの統合を狙う。

ルネサス エレクトロニクス株式会社

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.02.20 NEW