OSSエッジAIプラットフォームのAinekkoとMRAMベースAIアクセラレータのVeevxが合併-チップ設計の民主化を加速
2026年1月29日、オープンソースのエッジAIプラットフォームを手掛ける米Ainekkoは、ファブレス半導体企業の米Veevxとの合併を発表した。
Ainekkoは2023年設立、Veevxは2022年設立と、両社はいずれも設立数年のスタートアップで、Veevxは半導体特化のインキュベーターSilicon Catalystの支援を受けて立ち上がったファブレス企業である。
発表によると、合併後の会社名はAinekkoを継続し、Veevxの共同創業者で、長年Broadcomで知的財産管理に携わってきたDouglas Smith氏は、Ainekkoのエグゼクティブ・チームに参画する。ちなみに発表には「Raspberry PiのDNAがAinekkoに加わる」と書かれており、Douglas Smith氏はRaspberry Pi財団の設立に関わった人物なのかもしれない。
Ainekkoは、高価で閉鎖的だとされる既存のAIインフラに代わる「民主的なAIインフラ」の構築をミッションに掲げる企業で、昨年にはRISC-Vプロセッサで知られるEsperanto Technologiesの知的財産を買収し注目を集めた。同社は、オープンソースのエッジAIプラットフォームの提供に注力している。
一方Veevxは、独自のMRAM(磁気抵抗メモリ)技術を基盤とするCIM(Computation-in-Memory)方式のAIアクセラレータを手掛けている。同AIアクセラレータは、SRAMベースの実装と比較して約10倍の性能効率(TOPS/W)を実現するとしている。
両社は今回の合併により、互いの技術を統合し、「誰もが次世代AIチップを共同設計・構築できる」ことを狙った、柔軟なソフトウェア定義型のオープンソース・ハードウェア・プラットフォームを提供するとしている。具体的には、以下の要素を挙げている。
- Ainekkoが開発するエッジAIシリコン向けフルスタック・オープンソース・プラットフォーム(オープンソースRTL、エミュレーションツールを含む)
- Veevxが開発する独自のiRAMメモリ(MRAM)
- iRAMベースのCIM低消費電力AIアクセラレータ
- iRAMおよびAIアクセラレータと、旧Esperanto由来のRISC-Vプロセッサを統合したパッケージ
一部報道では、Ainekkoがこれらハードウェア・ソリューションのリファレンス・チップのテープアウトに向けて動いていると報じている。ただし同社は自社をチップメーカーではないと位置付けており、今後の収益化は、デザインサービス、チップの保守・サポート、iRAMメモリのライセンス供与などを軸に組み立てる可能性がある。
またAinekkoは今回の合併を機に、従来掲げてきた「シリコンの民主化」を拡張し、ハードウェア設計にAIエージェントが広く普及する未来を前提とした、「AIネイティブ・シリコン」プラットフォームの提供を主張している。言い換えれば、AIを活用したチップ設計の参入障壁を下げる環境整備を、より前面に押し出した形だ。
Ainekkoの掲げるビジョンがどこまで具現化されるかは現時点では不透明だが、Esperanto由来のRISC-V IPに加え、VeevxのMRAMおよびMRAMベースAIアクセラレータという要素技術を取り込んだことで、同社の「オープンシリコン」構想は一段と具体性を増した。オープンソース・ハードウェアの文脈で同社が何を実装し、どのようにエコシステムを形成していくのか、今後の動向が注目される。

Ainekko
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.02.16
NEW
)




