CadenceがRTL設計/検証向けのエージェントAI「ChipStack AI Super Agent」をリリース─生産性を最大10倍向上

2026年2月10日、Cadenceはフロントエンドのシリコン設計および検証向けエージェントAIソリューション 「ChipStack AI Super Agent」 のリリースを発表した。

プレスリリース

新製品「ChipStack AI Super Agent」は、Cadenceが2025年11月に買収したChipStack社の技術をベースとするAI支援ツールで、RTL設計および検証作業の自動化を狙う。Cadenceは本製品の活用により、生産性を最大10倍向上、設計・検証期間を数か月単位で短縮、特に検証ワークロードを最大40%削減できるとしている。

「ChipStack AI Super Agent」が対象とするのは、フロントエンド領域におけるRTL設計やテストベンチのコーディング、テストプラン作成、リグレッション・テストのオーケストレーション、デバッグなどで、これら複数のタスクを、役割の異なる複数のエージェントAIで分担・連携して処理する構成を採る。Cadenceが買収した時点のChipStackはRTL検証に特化したソリューションだったが、「ChipStack AI Super Agent」では、エージェントAIによるRTLの自動生成および最適化も機能として追加された。

「ChipStack AI Super Agent」のコア・コンポーネント

  • RTL Optimization Agent
    電力・性能・面積(PPA)の制約を満たすよう、RTLを最適化
  • Design Upgrade Agent
    新しい要件に基づき、既存RTLのアップグレードを支援
  • Formal Agent
    フォーマル検証プランと、対応するSystemVerilog Assertion(SVA) を生成(Cadence Jasper Formal Verification Platform向けのアサーション)
  • UVM Agent
    ダイナミック検証プランと、対応するUVMシーケンス/チェッカー/カバレッジを生成・アップグレード
  • Unit Testing Agent
    対象設計に対して、SystemVerilogのユニットレベルテストを生成
  • Debug Agent
    特定バグの自律的なトリアージと根本原因分析を行い、テスト修正案を生成
  • SoC Agent
    仕様要件に基づき、検証資料を備えたSoCファブリックのRTLおよびIPを生成
  • Signoff Agent
    RTLを分析して構造上の問題を特定・修正
Cadence HP上のデータ

「ChipStack AI Super Agent」の特長として挙げられるのは、「Mental Model」 と呼ぶ内部モデルを起点にAIを活用する点だ。この「Mental Model」によって、設計/検証対象の仕様や構造をAIに理解させ、ハルシネーションを抑制しつつ、エージェント処理の精度を高めている。

LLMをハードウェア設計に適用する際には、プロジェクト固有の仕様やノウハウをいかに取り込ませるかが成否を分ける。Cadenceが採用したChipStackの「Mental Model」を用いたアプローチは、その課題に対する有力な解の一つと言えるだろう。

「ChipStack AI Super Agent」は、Altera、NVIDIA、Qualcomm、Tenstorrent など、世界トップクラスのチップ設計およびシステム企業数社で初期導入中。発表に寄せられた先行ユーザーのコメントから、検証を中心に「ChipStack AI Super Agent」の実運用での効果に期待が集まっているのが見て取れる。

<先行ユーザーのコメント> 発表より

Altera社コメント:
「CadenceのChipStack AI Super Agentにより、一部の領域における検証作業が約10分の1にまで大幅に削減され、チームはより迅速かつ確実にクロージャを達成できるようになりました。」

Qualcomm社コメント:
「初期段階では、パフォーマンスの大幅な向上が示されており、生産性の向上が実現することを期待しています。」

Tenstorrent社コメント:
「ChipStackは、当社の形式検証作業の効率を大幅に向上させました」、「3つの重要な設計ブロックを3ヶ月間評価した結果、検証時間が最大4分の1に短縮されました。」

Cadenceが自信を持って投入する次世代のAIベース・フロントエンド設計/検証ツール「ChipStack AI Super Agent」。早ければ夏にはCadenceのイベントでその真の実力が明かされるだろう。

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.02.12 NEW