ISSCC 2026に見るチップ設計の新時代
2026年2月15日からサンフランシスコで半導体集積回路技術に関する国際会議「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2026」が開催される。
ここでは、公開されているISSCC 2026 のAdvance Programと公式ページの情報から、チップ設計に関する注目トピックスをまとめてみたい。
ISSCC 2026のテーマ
今年のISSCCのテーマは、「ADVANCING AI WITH IC & SOC INNOVATIONS」ということで、AIを動かすための回路/チップがカンファレンスの中心に据えられている。
基調講演に相当するPlenary Sessionsもカンファレンスのテーマに呼応する形でAI色が強く、MediaTek(Rick Tsai)、Cadence(Anirudh Devgan)、Apple(Hope Giles)の各登壇者がAI時代の半導体/設計/人材について講演する予定。
中でも注目したいのは、CadenceのCEO Anirudh Devgan氏の講演「Powering the AI Supercycle: Design for AI and AI for Design」で、 AIチップを設計するための「AI活用」と、AIのための設計という双方向のアプローチの進化が語られるようだ。また、今回のISSCCでは特別夜間イベントとして、 「Generative AI for Silicon Design(複雑性の制御、民主化、信頼性)」 というセッションも行われる予定。
チップ設計のための生成AIは、現在最も熱い技術分野となっており、論理設計、配置配線、デバッグ、検証といった膨大な作業を生成AIで自律的に行い、人間はより高次なアーキテクチャの構想に専念するというパラダイムシフトが進行している。
技術セッションにおいても同様にAI色が非常に濃く、 「Circuits for AI and AI for Circuits」、「AI Accelerators」、「Domain-Specific Accelerators」、「Highlighted Chip Releases for AI」など、AI向け回路/チップの話題が目立っている。
チップレットからラックへ
AIとあわせて大きな潮流となっているのが設計思想のスケールアップで、AIやHPCの爆発的な要求に応えるためには、もはやチップ単体の性能向上だけでは不十分となりつつあり、複数のダイを組み合わせる「チップレット」技術や、UCIe、NVLinkといった高速インターコネクト技術、パッケージ、さらにはサーバー・ラック全体を一つの巨大な計算機として統合設計するアプローチが不可欠となってきている。
今回のISSCCにおいては、チップレット、先端パッケージ、Die-to-Die・電源供給といった、チップからラックへのスケール・アップに繋がるテーマがチップ設計における第2の主役として取り上げられている。
期待が高まる「光・電気のリンク技術」と「次世代通信」
「チップからラックへ」というビジョンを実現する上で、AIクラスタの最大の障壁となるのが電気信号による入出力のボトルネック。これを打破する技術として光I/O、光通信技術をチップレベルで統合する「シリコンフォトニクス」などがISSCCでも注目されている。また、無線通信の領域では、Sub-6GHzとミリ波の間を埋める「6G FR3(7-24GHz)」に特化した回路技術が次世代通信の主戦場として注目されており、ISSCCでもフォーラムが用意されている。
AIの電力問題とアナログ技術
AIのエネルギー効率という課題の中で、メモリの内部で直接演算を行う「In-Memory Computing(IMC)」など、「アナログ技術」の活用がより注目を集めている。またアナログ回路をAIで設計するという方向も活発化してきているようだ。
また、AI/HPCの運用においては、いかに安定してかつロスなく電力を供給するかという、パッケージからラックレベルに及ぶ電力供給技術も地味ながら勝負所になっており、議論の対象となっている。
その他
AppleのHope Giles氏はPlenary Sessionにおいて、次世代のシリコン・エンジニアを育成し、エンパワーメントすることの重要性を強調する講演を行う予定。AI時代のエンジニア育成をどう考え、どう実施しているのかは大いに気になるところだ。また、「The Augmented Human」をテーマとした夜間特別イベントも開催される予定で、脳内チップによる認知拡張について技術だけでなく倫理・社会実装の論点も含めて議論される予定だ。半導体が人間の認知能力を拡張するというSF世界の実現は夢ではなくなりつつある。

ISSCC 2026
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2026.01.21
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