初めてドイツで開催された ICCAD 2025
2025年10月26日から30日の5日間、ドイツのミュンヘンで電子回路設計の国際学会 第44回 IInternational Conference on Computer-Aided Design ICCAD)が開催された。
ICCADが米国以外で開催されるのは今回が初めて。主催者発表によると6年連続で論文投稿数が増加し、2020年以降、投稿数は2倍以上に。今年は世界37の国と地域から過去最高の1,508件のアブストラクト投稿があった。
今年のICCADでは計1,078本のフルペーパーのうち266本が採択された。(採択率24.7%)ICCAD史上最大となった技術プログラムは、50の論文セッション、14の特別セッション、2つのチュートリアル、ICCAD初の試みとなるパネル・ディスカッションで構成された。
今年のベスト・ペーパー
今年のベスト・ペーパーを受賞したのは、下記2つの論文。
フロントエンド設計部門
LaZagna: An Open-Source Framework for Flexible 3D FPGA Architectural Exploration
Ismael Youssef, Hang Yang, Cong "Callie" Hao
Georgia Tech, Georgia Institute of Technology, United States
自動化されたエンド・ツー・エンドの3D FPGAアーキテクチャの生成と評価のための世界初のオープンソース・フレームワーク「LaZagna」の紹介と機能の実証および評価に関する論文。
「LaZagna」は、高レベルのアーキテクチャ仕様、合成可能なRTL生成、ビットストリーム生成といった機能を有し、3D FPGA設計の包括的な検証を可能にする。
※「LaZagna」はオープンソースで公開されており、GitHubで入手可能
バックエンド設計部門
Semidefinite Programming-Based Decoupling Capacitor Placement for Power Distribution Network Optimization
Zong-Ying Cai, Wei-Han Mao, Yao-Wen Chang, Yang Lu, Jerry Bai, BinChyi Tseng
National Taiwan University, ASUSTeK Computer Inc., Taiwan
また、10年前に発表された論文の中で、その後の10年間で最も大きな影響を与えたと評価された論文に贈られる賞「ICCAD 10 Year Retrospective Most Influential Paper Award」として下記の論文が表彰された。
Caffeine: Towards uniformed representation and acceleration for deep convolutional neural networks
Chen Zhang; Zhenman Fang; Peipei Zhou; Peichen Pan; Jason Cong
Brown University, University of California, Los Angeles, United States
FPGA上でCNN(畳み込みニューラルネットワーク)とFCN(全結合ネットワーク)全体を効率的に高速化するためのハードウェア/ソフトウェア共同設計ライブラリ「Caffeine」の設計・実装および評価に関する論文。
基調講演
基調講演には下記の3者が登壇した。やはりAIは欠くことのできないコアなテーマとなっており、設計手法の変革が迫られていることを強く意識させられる。
Diana Marculescu(University of Texas at Austin)
「The Quest for Energy-Efficient Generative AI」
エネルギー効率の高い生成AIを実現するハードウェア設計についての考察
Hans‑Jörg Vögel(BMWグループ)
「Driven by AI – Driving Requires More Compute Than Ever」
自動車分野におけるAI/ハードウェア要求の高まりとそれに対応するための開発手法について
Luca Benini(Universita di Bologna)
「End-to-End Open-Source Platforms in the Era of Domain-Specific Design Automation」
ドメイン特化型の設計自動化とオープン・プラットフォームの未来について
今年のICCADの傾向と注目ポイント
今年初の試みとして実施されたパネル・ディスカッションのテーマは、「Revolution or Hype? Seeking the Limits of Large Models in Hardware Design」
下記の登壇者が大規模AIモデルがハードウェア設計に与えるインパクトについて議論した。同種のテーマはICCADのみならず必ず業界イベントでのディスカッションの話題にあがるものとなってきている。
Grace Li Zhang, TU Darmstadt(モデレータ)
Xi Wang, Southeast University
Qiang Xu, National Technology Innovation Center for EDA, China
Rolf Drechsler, University of Bremen
Leon Stok, IBM
Igor L. Markov, Synopsys
チュートリアルは、「ハードウェア・セキュリティ」および「量子機械学習(QML)」2つのテーマで行われた。
量子機械学習(QML)、量子アーキテクチャ設計、量子対応設計自動化(Quantum EDA)など、量子技術への期待は設計自動化/EDAにとっても不可避なトレンドとなっているようだ。
50の論文セッションを大局的にまとめると、今回のICCADでは下記のような大きく5つのテーマが浮かび上がってくる。
・AI/LLMをハードウェア設計・EDAにどう取り込むか。
・ポストCMOS、ニューロモーフィック、マイクロ流体コンピューティングなど、新しい計算パラダイム。
・チップレット、異種集積、パッケージング、3D設計など、“モノ”としてのチップ形態の変化。
・ハードウェア・セキュリティ、耐量子設計、信頼性/テスト設計の深化。
・エッジ、モバイル、自動車など“用途特化型”の演算回路/演算システム。
中でもやはりAI/LLM関連が大きなトレンドとして見て取れるが、コンピューティングを実現するハードウェアのあらゆる側面において大きな変革が訪れていることを感じる。今後数年のうちに幾つかの変革は現実となり、新たな製品として世の中を変えていくことになるだろう。
なお来年のICCADの開催地については未だ公式発表はない。
ICCAD
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2025.11.28
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