CadenceがRTL検証向けAIエージェントのChipStackを買収

2025年11月10日、Cadenceは検証向けのAIエージェントを手がける米ChipStack社の買収を発表した。

プレスリリース

ChipStackは2023年設立のスタートアップで社員は30名弱。Qualcomm、Nvidia、Facebook、Google などに所属していたチップ設計者およびAI研究者が主要なメンバーで、RTL検証向けのAIエージェント4製品を提供している。

同社はベンチャー・キャピタルから700万ドル以上のシード資金を調達しており、すでに10社以上の顧客を持ち、売上実績は400万ドルを超えていたとのこと。CadenceとChipStackは以前から協業関係にあり、Cadenceはシミュレータ「Xcelium」、フォーマル検証ツール「Jasper」など、自社のフロントエンド検証環境にChipStackのAIエージェント技術を統合している。

今回の買収は両社の協業の延長にあるもので、CadenceはChipStackのAIエージェントを自社のフルフロー検証ソリューションに組み込むとしている。ChipStackのAIエージェントは下記4製品あり、これらを活用することで機能検証期間を数週間から数日に短縮できるとうたっている。

MentalModelAgent:検証AIエージェント用の「メンタルモデル」を作るAIエージェント。

FormalAgent:フォーマル検証用テストプランとSVAテストベンチを作成するエージェント。フォーマル検証の実行結果をもとにレビュー用のバグ修正を提案する。

UnitSimAgent:テストプランとテストベンチを作成するエージェント。SystemVerilogの知識がなくてもユニットレベルのシミュレーションができる。

画像はChipStackのホームページより引用

UVMAgent:既存のUVM環境をインテリジェントに更新・拡張するエージェント。テストプランの作成、ターゲット機能カバレッジの実装、テストベンチ拡張を実行。

RTL設計フェーズにおけるAIエージェント機能はここ最近のEDA業界でトレンドとなっており、各社がしのぎを削る注目技術となっている。今回の買収がCadenceの検証ソリューションをどう進化させていくのか楽しみだ。

ChipStack
日本ケイデンス・デザイン・システムズ社

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2025.11.11 NEW