Cadenceがチップ設計、システム開発、創薬に向けたNVIDIAベースのAIスパコン「Millennium M2000」を発表
2025年5月7日、Cadenceは同社のイベント「CadenceLIVE Silicon Valley 2025」にて、NVIDIAベースのスーパーコンピュータ「Millennium M2000」を発表した。
「Millennium M2000」は、チップ設計、システム設計・解析、創薬向けのスーパー・コンピュータでAIを活用し各種シミュレーション実行時間を大幅に短縮し、CPUベースのシステムと比較して最大80倍の性能向上を実現。消費電力を最大20分の1に削減することができるという。
「Millennium M2000」を構成する主要なコンポーネントは、NVIDIA HGX B200システム、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU、NVIDIA CUDA-Xライブラリなどで、これらとCadenceの各種EDAツール/ソルバー・ソフトウェアを統合して運用する。

※画像はCadence社HP上のデータ
Cadenceは「Millennium M2000」の性能指標の例として、以前は数百台のCPUで約2週間かかっていたチップレベルのパワー・インテグリティ・シミュレーションを、「Millennium M2000」1台で1日以内に実行できると主張。既にチップ設計、システム設計、創薬の各分野に「Millennium M2000」の先行ユーザーが存在しており、各ユーザーから以下のようなコメントが寄せられている。
Ascendance社:
Cadence Fidelity CFDソフトウェアを用いた航空機の空力性能のシミュレーションで「Millennium M2000」を活用。シミュレーション実行時間を20分の1に短縮。
Boom Supersonic社:
超音速航空機の設計で「Millennium M2000」を導入。Cadence Fidelity LESソルバーの解析実行時間は1週間からわずか2日に短縮された。
MediaTek:
半導体設計で「Millennium M2000」を導入。同スーパーコンピュータ上でVoltusソリューションを活用することで、これまで不可能だったシミュレーションを実行でき、最適なコストと電力効率で卓越した性能を実現。
Supermicro社:
「Millennium M2000」の開発でCadenceと協業。「Millennium M2000」のベンチマーク結果で、高精度熱シミュレーション・ワークロードを8倍以上高速化できることを確認。
Treeline Biosciences社:
創薬において「Millennium M2000」とCadenceのOrion分子設計プラットフォームを導入。
なお、「Millennium M2000」スーパー・コンピュータは、クラウドとオンプレミスのアプライアンスの両方で利用することが可能。製品価格については明らかにしていないが、一部メディアの報道によるとユニットあたり推定200万ドルという話だ。
Cadenceはエミュレータの提供で半導体設計の世界で既に多大な実績を積み上げているが、AIアクセラレーション・エンジニアリングという新たな技術に向けてハードウェア・ベース・ソリューションの範囲を拡大し、システム開発や創薬も含めてビジネスを伸ばしていく構え。これができるのはCadenceの大きな強みと言える。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2025.05.09
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