グラフェンを用いたチップ間通信を手掛ける独Black Semiconductorが2億7300万ドルを調達

2024年6月12日、グラフェンを用いたチップ間通信技術を手掛けるドイツのスタートアップBlack Semiconductorによる資金調達を各種メディアが一斉に報じた。

米TechCrunchの記事

Black Semiconductorはドイツのアーヘン大学からスピンアウトした企業で、Daniel Schall氏とSebastian Schall氏の兄弟が共同で設立。現在従業員は30名弱でSchall兄弟がそれぞれCEOとCFOを務めている。

同社が取り組んでいるのはグラフェンを用いたチップ間通信技術で、具体的には「CIO(co-integrated optics)システム」と呼ぶグラフェンを用いて作った電子と光子のトランスレータを使い電子信号を光信号に変換したり、その逆を行うことでチップ間通信を実現。グラフェンによる同技術はチップ間のデータ通信を高速化してパフォーマンスを向上させ、エネルギー効率を改善し、必要な製造工程をシリコンと比較して60%削減することが可能。最大数キロメートルの距離に及ぶ大規模な並列光チップ接続を実現できるという。

このBlack Semiconductorのグラフェンによるチップ間通信技術は、データセンターの効率的なチップ・ネットワーク設計や組み込みAIアプリケーションにおけるセンサーと制御ユニット間の通信高速化などを実現すると考えられており、その将来性の高さから資金調達Aラウンドでありながら2億5400万ユーロ(2億7300万ドル)という巨額の資金調達に成功。この金額は半導体を扱う欧州のスタートアップ企業がこれまでに調達した金額としては最大級だという。

今回Black Semiconductorが調達した資金の大半はドイツの公的資金となるが、同社は集めた資金を元にASMLなどと協力して製品の量産化を目指し、2031年までに最初の製品を市場に送り出す計画だという。

Black Semiconductor

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2024.06.13 )