真の従量課金制と柔軟性をうたうSynopsysの新たなクラウド設計ソリューション「Synopsys Cloud」
2022年3月30日、Synopsysは新たなクラウド設計ソリューション「Synopsys Cloud」を発表した。
発表によると「Synopsys Cloud」の大きな目玉は、Microsoft Azure上に用意されたSaaSとしてのチップ開発環境で、Synopsysは同環境を真の従量課金制と柔軟性を実現するものだと表現している。
Synopsysは元々「Synopsys Cloud Solution」としてクラウドベースでEDAツールを利用できるサービスを提供していたが、今回発表された「Synopsys Cloud」は言わばその進化版でクラウド環境上でのEDAツールのライセンス提供形態が大きく変わった。その中心となるのが「FlexEDA」と呼ばれる新しい従量制の課金モデルで、これによりユーザーは文字通り「必要な時に必要なだけ」のEDAツールライセンスを利用することが可能に。Microsoft Azureを利用したSaaSとしての「Synopsys Cloud」を利用すれば、実行したいのEDAジョブに必要なコンピューティング・リソースも自動的に用意される。
クラウド環境を利用したチップ設計というアプローチは、SynopsysとCadenceがサービスを開始し始めた2018年頃から拡がり始め、TSMCやSamsungなどファウンドリも顧客向けに環境を用意するという流れが生まれているが、これまでのクラウドベースの設計環境は、ユーザー企業がクラウド上で使用するEDAツールのライセンス個々に契約し、それに応じたコンピューティング・リソースを何かしらの形で用意する必要があった。しかし、今回Synpopsyが発表したSaaSとしての「Synopsys Cloud」は、そういったEDAツールの個別契約やコンピューティング・リソースの確保が一切不要となる画期的なもので、ユーザーはブラウザベースでいつでも自由に1分単位でSynosysのEDAツールを用いた設計・検証を実行できるようになる。
※画像はSynopsys Web上のデータ
言うまでもなくこの「Synopsys Cloud」の活用メリットは非常に大きく、同環境を利用すれば設計チームは複雑なIT環境や設計フローにおけるライセンス管理を行う必要が無くなる。(設計の全てをSynopsysのツールで完結すればの話だが。)更には予算や進捗に合わせたより柔軟な設計プロジェクトの管理が可能となる。「Synopsys Cloud」にはEDAツールの利用に関する洞察をユーザーに与えるべく様々な分析用のダッシュボードが用意されているようで、例えば目標性能や目標期限に到達するために必要なEDAツールのライセンス数/コンピューティング・リソース/コストを割り出し、それに応じて作業を進めるといったことも可能となるようだ。
なお、Synopsysが開発した特許出願中の「FlexEDA」と呼ばれる新しいEDAツールの従量制課金モデルは、ユーザー企業が独自のクラウド環境を利用する場合でも使用することが可能。但しその場合は1分単位ではなく1時間単位での従量課金となり、EDAツールを実行するためのコンピューティング・リソースは自前/自力で用意する形となる。
チップ設計のクラウド環境への移行はその多大なメリットから世界的に進行しているが、今回発表された「Synopsys Cloud」によってその流れは更に加速することは間違い無いだろう。Synopsysは現在「Synopsys Cloud」のフル機能を利用できる30日の無料評価ライセンスを提供している。
https://www.synopsys.com/cloud
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2022.04.04
)