Cadenceがデジタル設計フローの革新を促すAI機能「Cerebrus」を発表
2021年7月26日、Cadenceは新製品「Cerebrus™ Intelligent Chip Explorer」を発表した。
発表によると新製品「Cerebrus」は、デジタル設計フローの革新を狙うマシンラーニング・ベースの新製品で、AI機能を用いることで高度に設計を効率化。合わせて設計品質を大幅に向上することができる。Cadenceの説明によると「Cerebrus」を利用することで、従来手法と比較して設計生産性を最大10倍も向上することが可能。PPAを最大20%も改善することができるという。
「Cerebrus」は独立した製品というよりは、オプション機能のようにツールの処理を補助するような役割を果たすツールで、Cadenceのデジタル設計フローの基幹をなす論理合成ツール「Genus」、配置配線ツール「Innovus」、タイミング解析ツール「Tempus」、それぞれと組み合わせて使うことが可能。またこれらツールによる一連の処理に対して利用することもできる。
具体的には、これまで設計者が独自の知見で対応していた様々な回路のチューニング作業を「Cerebrus」で自動化することが可能。ツールのオプション変更やタイミング制約などの設計制約の変更、フロアプラン形状の変更やライブラリのチューニングなど、目標とするPPAに向けて回路を繰り返し最適化する作業に「Cerebrus」を当てはめることが可能で、極端な話、熟練の設計者が時間をかけて得る最適解を一般の設計者でもプッシュボタン式に得られるようになる。そのAI機能についての詳細は不明だが、性能、面積、電力とそれぞれに目標性能を設定し、それに見合った人間では長時間を要さなければ見つけられないような解を「Cerebrus」はすぐに見つけてくれるということだ。
Cadenceが示した5nmモバイルCPUの設計例では、複数エンジニアが数ヶ月かけて実装した設計結果よりも、設計者一人で「Cerebrus」を用いて設計した結果の方が優れており、要した設計期間は10日以内だった。また別のCPU設計例では、フロアプランニングに対して「Cerebrus」を適用したところ、当初の目標性能を上回る結果を得られたという。他にも既にルネサスやSamsungなど大手先行ユーザーが「Cerebrus」を利用して成果を上げているということで、その成果についてコメントを寄せている。
※画像はCadence提供のデータ
Cadenceはシステム分野へのソリューション拡張と合わせて、AI/マシンラーニング技術の取り込みにも積極的に力を注いでおり、今回発表した「Cerebrus」は大型の新ソリューションとなる。今後EDAの世界でもAI/マシンラーニングによる技術革新が益々進むと思われ、それによる設計の進化が楽しみな時代になってきた。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2021.07.27
)