サンノゼでRISC-V Summit 2019開催、更に沸き立つRISC-Vエコシステム
2019年12月10日から12日の3日間、サンノゼで世界最大のRISC-Vコミュニティのイベント「RISC-V Summit 2019」が開催された。
昨年始まったばかりで今年で2回目の開催となるRISC-V Summitだが、昨今のRISC-Vブームとも呼べる世界的なムーブメントの勢いはとどまることを知らず、3日間で80以上のセッション、2,000人以上の来場者、50社以上のスポンサーが集まるイベントに急成長している。
イベント会期中にはRISC-Vエコシステムを形成する様々な企業・団体から、様々なアナウンスがあったが、ここではEDA-EXが注目した幾つかの話題について紹介したい。
■Western Digitalが世界初となるデュアルスレッドの商用組込みRISC-Vコアを発表
RISC-V Foundationの中心メンバーであり、今回のRISC-V Summitの最上位スポンサーであるWestern Digitalが新たなRISC-Vコア「SweRV Core EH2」、および「SweRV Core EL2」を発表した。
「SweRV Core EH2」は、世界初となるデュアルスレッドの商用組込みRISC-Vコアで、双方向スーパースカラー・アーキテクチャ上で2つの同時スレッドの実行をサポート。既にリリースされている「SweRV Core EH1」と同じく32ビットの9ステージ・パイプラインのRISC-Vコアで、組込みAI、ストレージ・コントローラ、IoTアプリケーションなどに適している。
「SweRV Core EL2」は、16nmプロセスで.023mmという4ステージ・パイプラインの超小型コアで、コントローラーSoCのシーケンシャル・ロジックやステートマシンの置き換えなどに適している。
また、Western Digitalは、同社の開発するRISC-V向けのネットワーク・プロトコル「OmniXtend」の新たなリファレンスデザインも発表。「OmniXtend」は、イーサネット・ファブリック上でキャッシュコヒーレント・メモリを提供するオープンなプロトコルで「SweRV」ファミリのRISC-Vコアとともに、Linux FoundationがホストするCHIPS Allianceプロジェクトに管理が委ねられている。
■「OpenHW Group」が「CORE-V Chassis SoC」プロジェクトを発表
RISC-Vベースのオープンソースコア「CORE-V」を提供する非営利組織「OpenHW Group」は、「CORE-V Chassis SoC」プロジェクトと呼ぶヘテロジニアス・マルチコアSoCの開発プロジェクトを発表した。
発表によると「CORE-V Chassis SoC」は、NXPのSoC「i.MXプラットフォーム」をベースに、Linux対応の64ビットRISC-Vコアと32ビットRISC-Vコアが組み合わされる構成で、2020年後半のテープアウトを目指しているという。
■WindRiverがVxWorksによるRISC-Vアーキテクチャのサポートを発表
WindRiverはRISC-V Foundationのメンバーとして参画し、既にMicrochipの「PolarFire SoC FPGA」、SiFiveのRISC-V IPコア製品などでVxWorksの実装を実現している。
■LatticeとSiFiveがコラボレーションを発表
プレスリリース(www.design-reuse.com)
LatticeとSiFiveのコラボレーションにより、28nm FD-SOIプロセスで製造されるLatticeの最新FPGA「CrossLink-NX」を含むLatticeのFPGAファミリ製品から、SiFiveの提供する「SiFive E2 Core」などのRISC-Vコアに簡単にアクセスできるようになるという。
■デンソー子会社のIPベンダNSITEXEがSmartDVのTileLink向け検証IPを採用
自動運転向けのデータフロー・プロセッサ(DFP)を手掛けるNSITEXEは、RISC-Vプロセッサで利用されるネットワーク・プロトコル「TileLink」の検証用IPをSmartDV社から導入した。その狙いは当然RISC-V製品の開発にあり、NSITEXEのDFPではRISC-Vコアが利用されているようだ。
■RISC-Vベースの新製品をアナウンスする各社
その他にも下記に挙げた企業など、RISC-Vエコシステム内の多くのプレーヤーが新製品のアナウンスを行なっている。
・Andes Technology:AndesCore 27-series CPU core
・Cobham Gaisler:NOEL-V processor
・GreenWaves Technologies:GAP9 IoT Application Processor
・Think Silicon:NEOX|V GPU
なお、RISC-V Summitの開催に先立ち、SiFiveが教育プログラムと教育用の開発パッケージを発表。プレスリリース iFive FE310プロセッサを搭載するボードは、6,000円弱で予約受付中とのこと。
また、Imagination Technologiesは、10世代目のPowerVRにおいてGPUコアの制御にRISC-VベースのCPUコアを採用したことを発表している。プレスリリース
■驚異の成長率で利用者が増えるRISC-V
調査会社Semico Reserchのレポートによると、RISC-VべースのCPUコアの利用数は2025年には累計624億個に到達する見通し。利用個数の平均成長率は2018-2025年で146.2%と、毎年倍以上の速さで利用数の増加が進む。RISC-Vベースコアを消費する最大セグメントはインダストリアル関連だという。プレスリリース
既にハードウェアの世界で大きな潮流となったRISC-V、今後の進化、そしてエコシステムの拡大からしばらく目が離せない。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2019.12.13
)