インプリ環境の強化とMachine Learning技術でビジネスを大きく推進、Cadence主力ソリューションの最新事情

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2019年7月19日、日本ケイデンスはみなとみらいで恒例のプライペート・イベント「CDNLive Japan 2019」を開催。1000人近い参加者を集めた。
「CDNLive Japan 2019」で行われた30以上のセッションのうち、半分以上はCadence製品のユーザーによる事例講演だったが、Cadenceによる講演も目を引くものが多かった。
ここでは、聴講したCadenceセッション「さらなるPPA最適化に向けてマシンラーニングを活用するデジタルICソリューション」について紹介する。講演したのは米国ケイデンス本社のデジタル・サインオフ・グループ、マーケティング及びプロダクト・マネジメント担当のバイス・プレジデントKT Moore氏である。
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KT Moore氏の講演は、配置配線ツール「Innovus」を中心としたデジタル・インプリメント環境の話だったが、正直予想に反して面白かった。
まず、Cadenceツールの実績に関する話だが、相当ビジネスの調子がいいようで、KT Moore氏はデジタル・インプリメント環境としては業界のリーダーになったと明言。その裏付けとして様々な実績を挙げた。
 ・7nm デザインのテープアウト数は120以上
 ・半導体上位20社のうち17社が導入
 ・USのビッグカンパニーとの契約を複数獲得
 ・SamsungやMediaTekとの契約を拡大
中でもCadenceのデジタル・インプリメント環境が強く支持されているのは、モバイル及びデータセンター向けの汎用チップ、ネットワークやAI/ML向けのカスタムASIC、車載向け汎用チップの設計といった、いわゆる儲かりどころの分野で、既に5nm, 3nmといった先端プロセスにおいても複数プロジェクトを進行中。PPA(Performance, Power, Area)の最適化においてCadenceのソリューションは、抜きん出た能力を発揮しているという。
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KT Moore氏によると、Cadenceは約6年近くかけてデジタル・インプリメント環境を再構築、その過程で精度を落とさず18ヶ月毎にTATの半減を実現してきたとのこと。インプリメント環境の中核をなすのは下記図の4製品で、フロントの論理合成「Genus」と配置配線「Innovus」は「iSpatial」と呼ぶ技術で高い相関性が実現されており、インプリTATの改善とPPAの向上に大きく寄与。論理合成ツール「Genus」は、強い競合製品がある中で先端プロセスデザインを中心にシェアを拡大中という話だ。
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また、スタティック・タイミング解析ツール「Tempus」も売れ行き上々ということで、「Innovus」との緊密な連携によって実現する「Tempus」のタイミングECO機能は半導体上位20社の75%が利用しているという。KT Moore氏は、「Tempus」とIRドロップ解析ツール「Voltus」により、サインオフ精度のタイミング最適化とパワー最適化を合わせて実現できるのがCadenceのデジタル・インプリメント・フリーの大きな強みの一つであると繰り返し強調した。
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今回のKT Moore氏の講演で興味深かったのが、デジタル・インプリメント環境におけるMachine Learning技術(以下、ML技術)の応用に関する話。昨今、EDAの世界でもML技術を用いた効率化や最適化の話が活発だが、CadenceはML技術関連の取り組みにかなり力を注いでいる様子で、KT Moore氏は幾つかの事例を示しながら、その内容を紹介してくれた。
まず「Tempus」は「Voltus」との連携によって実現するパワー・インティグリティ解析において、ML技術を用いることで、IRドロップのセンシティブなパスを特定する事が可能。この手法は従来手法では手の届かない深いパスにおけるリスクを検出するのに有効だという事で、実際に7nmモバイル向けデザインにおいて、同手法で新たなIRドロップのリスクを複数検出したという事例をKT Moore氏は紹介していた。
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また、配置配線ツール「Innovus」においてもデザインのPPA最適化向けにML技術が利用されており、ユーザーが独自にトレーニングモデルを作り、社内の設計データを用いてモデルをトレーニングすることで、最適な配置配線を推論するという仕組みが既に実現されているという話。KT Moore氏によると、Cadenceではモデルのトレーニング用に安価な「Innovus」ライセンスも用意しているということで、この仕組みは既に複数の顧客で利用されており、PPAを平均約5%改善という結果をもたらしているという。なお、Cadence
ではツール内部での適用に限らず、論理合成から配置配線、サインオフ検証と一連のインプリメント・フロー全体におけるML技術の活用にも取り組んでいるという事だ。
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※画像はCadence提供のデータ
個別にKT Moore氏に聞いた話では、同社内には各製品事業部をまたいで横断的に活動するML専門チームが組織されており、社内の製品開発に限らず例えばDARPAのプロジェクトなど社外においても、様々な企業、大学、団体らと積極的にML技術の設計適用に向けて協働しているという事だった。
今回のKT Moore氏の講演は、デジタル・インプリメント環境に対するCadenceの力の入れようと自信、そして更にML技術を加えてインプリ技術を強化しようという、Cadenceの並々ならぬ意気込みを強く感じさせるものだった。
※日本ケイデンス・デザイン・システムズ社

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2019.08.23 )