画像処理プロトタイピングで分かった「HAPS」の利用メリット-ルネサスの事例
2012年7月12日、Synopsysのユーザー・カンファレンス「Synopsys Users Meeting 2012」が都内のホテルで開催された。
ここでは同セミナー行われたセッション「HAPSによるリアルタイム画像処理プロトタイピング」について紹介する。
講演を行ったのは、ルネサス エレクトロニクス株式会社 MCU事業本部 設計統括部 戦略製品開発部 開発二課の寺島和昭氏。
寺島氏の部署ではテレビ向けの画像処理SoCを開発しており、顧客の要望に応じて実システムの画像評価をいち早く実現するためにFPGAプロトタイプを必要としている。特にテレビなどの場合は、パネルの特性評価など実スピードの画質確認が求められたり、実システムでチューニングした画質パラメータやソフトウェアを求められるケースがあるため、動作速度の早い高速なFPGAプロトタイプが必要となる。そこで実システム並の100Mhz超のスピードで動作するSynopsysのプロトタイピング・ボード「HAPS」を使用してみた。
※画像は寺島氏の講演データ
寺島氏によると、「HAPS」に限らず市販のボードを利用すれば、内製ボードのようにボードの設計や検証にかかる時間を省けるが、「HAPS」の利点としては、既存のプロトタイプ設計フローに対するツールの置き換えだけで設計のフローは殆ど変える必要が無いという面もあるとの事。従来使用していた内製のデバッグ・ツールをSynopsysの「Identify」に、論理合成をXilinxのXSTからSynopsysの「Synplify Premier」に変えただけで設計が可能であったという。
※画像は寺島氏の講演データ
また、テレビ向けのシステム評価にあたり大きなSRAM容量が欲しかったが、HAPSのプラットフォームはそのような拡張も簡単に実現可能で、今回発表したケースでは、最初にXilinxのVirtex-5が1個搭載されている「HAPS51」でプロトタイプを作り、その後にVirtex-5が2個搭載されている「HAPS62」へと移行。最小のデザイン変更のみで簡単にボードを変更可能で、「HAPS62」に2個搭載されているFPGAのロジックSRAMを利用し有効なシステム評価を実現できた。寺島氏は、変更のないデザイン部を固定化し、様々なバリエーションのボードを簡単に作れるのは「HAPS」を使う大きなメリット一つであると語った。
※画像は寺島氏の講演データ
実際に「HAPS」を用いたプロトタイプ設計を既存のフローと比較したところ、実行時間、タイミング収束、面積ともに既存の設計フローよりも良い結果となった。寺島氏によると、性能向上や面積削減はデザインに依存する部分が大きいとの事だったが、デザインのデバッグ効率についても従来より20%程度改善出来たと説明した。また寺島氏は、その他の「HAPS」適用効果として、動作の安定性・信頼性、省スペース化などを挙げた。今後は、LVDS、miniLVDSといった特殊なインタフェースへの対応や、高速IFを用いたボードとPCの接続などに取り組んで行く予定だという。
※画像は寺島氏の講演データ