【49DAC】Gary Smith氏の講演「Trends and What’s Hot at DAC」
第49回Design Automation Conferenceで行なわれたGary Smith EDA社代表、Gary Smith氏の講演レポート。
昨年に続いて今年もDAC恒例となっているGary Smith氏の講演「Trends and What's Hot at DAC」を聴いた。同氏の指摘する注目の技術・ツール、動向、課題などはEDA業界および設計のトレンドを掴む上で非常に参考になる。
今年のGary Smith氏は、「It's All About Debug」と題したスライドから話を始め、ハード、ソフト、テストベンチなど、大規模化複雑化するSoC設計におけるデバッグの重要性を説き、下記7社をデバッグ・ソリューションを提供する企業として紹介した。
・Mentor「Sourcery CodeBench」、「Veloce」
・Eve「Zebuシリーズ製品」
・Cadence「Palladium」
・SpringSoft「Verdi」、「ProtoLink」
・Axiom「Designer」
・IC Manage「Global Design Platform」
※Mentor,Eve,Cadenceについては、デバッグ機能を含むトランザクション・レベルのアクセラレーション&エミュレーション・ソリューションを提供していると紹介。
※製品名はG・Smith氏が挙げた訳ではありません。EDA-EXが当該製品名を記載しています。
続いて挙げたのは「SVP(Silicon Virtual Prototype)」の話で、以前から「SVP」技術の有用性に着目しているGary Smith氏は下記3つのソリューションを紹介した。氏の言う「SVP」とは、ハードウェア実装のための仮想プロトタイピングとして捉えられており、その抽象度はESLに近づいており、いずれはアーキテクチャ設計環境としての「SWVP(Software Virtual Prototype)」と繋がるようになるだろうと語られた。
・Atrenta「Gensys Assembly」
・Xilinx「Vivado」&Cadence「VSP」(Xilinx Zynq向けSVP)
・Entasys「Pillar-DP-SVP」
そして今回も力を入れたのがESLツールの話。下記各社の製品を話題にした。Gary Smith EDA社調べによると、2011年のESL市場は前年比75%増の4億6000万ドルに拡大。Forteは前年比30%増、EVEは前年比15%増と推測されている。Cadence,Mentor,EVEのエミュレーターベースのソリューションとMentorの「Sourcery CodeBench」は、先出のデバッグ・ソリューションと合わせてESLソリューションとしても紹介された。これらソリューションも売上統計に含まれているとするとESL市場の急成長も納得できる。
・ESL Synthesis
?Calypto「Catapult」
?Forte「Synthesizer」
・Transaction Level Emulation&Accelaration
?Cadence「Palladium」
?Mentor「Veloce」
?EVE「ZeBuシリーズ製品」
・Intelligent Test Bench
?Breker Design Autmation
・SWVP(Software Virtual Prototype)
?VWorks
・Manycore Software Development Tools
?ARM
?Mentor「Sourcery CodeBench」
その他、レイアウト・ツールとして、日本から出展のJEDAT、アナログ・レイアウト・ツールを手掛ける中国のEDAベンダHES社と合併したIC Scape、ATopTechを紹介。ATopTechはASICレイアウトで依然強いとした。また、RTLサイン・オフ・ツールとして、フォーマル検証技術を扱うAtrenta、Real Intent、JasperとFPGAにフォーカスしたRTL解析ソリューションを手掛けるBlue Pearlを紹介。フォーマル検証はコーナー・ケースのバグ潰しに役立つとし、FPGA市場を狙うBlue Pearlの戦略を評価した。Thamal Analysisツールについては、パワー関連のEDAベンダが熱解析へと動き出しているとして、業界首位のApache、新興ベンダの独Doceaを紹介した。熱解析ツールにとって3D-IC市場がメジャーな市場になると見られている。
※画像の人物がGary Smith氏
一通り注目するEDAベンダ、EDAツールの話を終えた後、今回の講演でGary Smith氏が最も熱弁を振るったのは、「Multi-Platform Based Design」に関する話しであった。
「Multi-Platform Based Design」とは、複数のプラットフォームを用いた設計手法で、Gary Smith EDA社ではそのベースとなるプラットフォームとして下記4種を定義し、今年から「Multi-Platform Based Design Wallchart」として、当該ソリューションをリストアップしている。
・Foundation Platform:
Apple Axプロセッサ、NVIDIA Tegra、TI OMAPなど。
・Functional Platform:
AMD Fusion、ARM Cortex/Mali、Infineon TriCoreなど。
・Programmable Platform:
Altera Cyclone ?、Cypress PSoC、Xilinx Zynqなど。
・Applications Platform:
Synopsys DesignWare SoundWave Audio Subsystem
Gary Smith氏曰く、プラットフォーム化が進む事で先端モバイルSoCの開発コストは、IDM/ファブレスがターゲットとしている$50 millionから$39.8 millionまで下がり、スタートアップがVCから調達可能な$25 millionに近づいているとの事。同氏は昨年の48DACで開発コストの削減の必要性を訴え、そのための手段としてプラットフォーム・ベース設計の重要性を説いていたが、それが既に現実となっているようだ。
Gary Smith氏は、各プラットフォームの中でキーとなるのは「Applications Platform」で、検証環境を含むハードウェアのプラットフォームと既存のソフトウェアを統合し、特定のアプリケーション開発に特化したプラットフォームを構築する設計手法は、設計コストの削減だけでなく競争力にも繋がるとした。現在、EDAベンダが提供する「Applications Platform」としては、SynopsysのオーディオIPサブシステム「DesignWare SoundWave Audio Subsystem」があるが、Synopsysは同ソリューションを用いることで従来数週間要していたオーディオ・サブシステムの構築作業をわずか数時間の単位で完了できるとしている。
尚、Gary Smith氏は、昨年の講演で2015年に世界EDA市場は$6,612 millionに到達するとの予測を示していたが、今年の講演では2015年の市場規模を$6,415 millionに修正。更にその先2016年には$7,230 millionに達するとの予測を示した。