SystemC Japan 2013ユーザー事例講演、リコーにおける仕様の一元管理手法
2013年6月21日、今年で8回目の開催となるセミナー「SystemC Japan 2013」が開催された。
同セミナーは、設計言語IEEE 1666 SystemCにフォーカスした技術セミナーで、主催はSystemCの仕様策定および普及活動を推進する業界団体米Accellera Systems Initiative。SystemC関連のセミナーとしては世界最大の開催規模を誇っている。
ここでは、SystemC Japan 2013で発表されたリコーによるユーザー事例の内容を紹介する。
■リコー「IP-XACTで"つなぐ"仕様の一元管理」
リコーによるSystemC Japanでの発表は今年で5年連続。今年はワーク・ソリューション開発本部 第六開発室 開発一グループの小澤 賢一氏が、IEEE 1685 IP-XACT標準を利用して設計仕様の一元管理を行った事例を発表した。IP-XACTは、SystemCと同じくAccellera Systems Initiativeが仕様策定および普及活動を推進している。
リコーではSystemCをベースとした設計プラットフォームを共有することで、上流設計におけるアーキテクチャ探索、ソフトウェア開発、RTL検証の連携と効率化を図っているが、TAT短縮を図るために、最終FIXする前の仕様書を元に個々のモジュール設計(RTL設計)やSW開発環境の作成などを並列して進めているため、仕様変更へすぐに対応可能な仕様の一元管理手法を模索していた。そこでその手段として選んだのがIP-XACTの利用。具体的にはIP-XACTベースの設計ソリューションを提供する仏Magillem社のツールを導入することで、仕様の一元管理に取り組んだ。
今回小澤氏が発表したのは、ソフト早期開発、RTL検証、高位合成における仕様一元管理の例で、Magillem社のツール上でゴールデンな仕様をIP-XACT形式で管理。その仕様からMagillemツールのコンフィギュレーション機能を用いて各種テスト環境を自動生成した。
例えば、ソフトの機能検証環境としてSystemC TLM-LTベースの環境を、デバドラ開発用として一部のIP部の抽象度をRTLに切り替えた環境を同じ仕様から生成した。その元となるIP-XACTデータは、HDLで記述された既存のRTLやSystemCモデルなどをMagillemのツールに入力する事で自動生成したもので、小澤氏曰く、Magillemのツールは IP-XACTを知らなくても使えたとの事。
ちなみに、ソフト機能検証環境からデバドラ開発用検証環境への移行は僅か2時間程度で済んだとの事で、実際に仕様変更が発生したケースでIP-XACTベースの一元管理で対応したところ、従来手法と比較してIP検証の工数を半減。品質向上にも一定の成果をもたらすはず(仕様の一貫性からインタフェースやレジスタ周りの不整合が排除できる)という話だった。
※スライド資料は全てリコー提供のデータ
また、高位合成向けには、Magillemツールにレジスタ情報をインポートし、そこから高位合成可能なレジスタ・テンプレートを作成するという形でIP-XACTを活用したとの事。その他にも、ドキュメント管理や設計データのバージョン管理にもIP-XACTベースのMagillemツールを利用しているという事だった。