「不況、半導体業界、EDA業界、中小企業」-シンコム 林社長

不況、半導体業界、EDA業界、中小企業

 はじめまして、株式会社シンコムの林誠と申します。弊社は、2004年7月設立以来、RTLからGDSIIまでの設計サービス、設計コンサルティング業務に力を入れ、当初社員2名から24名まで、成長を遂げております。去年からは、システムレベルとアナログ分野の設計サービスにチャレンジし、実績を上げております。

 不況が日本の半導体業界を直撃しています。

 まず、日本の半導体業界は大きく再編しようとしています。昨今、ニュースで日本半導体大手が統合の話が大きく報道されていますが、2年前に挫折した独立ファウンドリ検討が、また検討されるかも知れません。日本の半導体大手は、ワールドワイドレベルから見ますと、規模が小さく、コスト面で競争力が弱い体質を持っています。業界の再編と統合は、いずれ時間の問題だと思いますが、生き残るためには、力を合わせ、競争力のある製品を創り出すことが重要です。半導体業界が統合されることは、EDAベンダーにとっては、日本マーケットの縮小を意味します。

 ワールドワイドの観点から見ると、半導体業界は分業化が進んで、アメリカの大手も自社のファブを止め、生産を海外に委託し、業績をあげています。設計に集中することにより、他社との差別化を図ろうとしています。日本の場合、規模が小さいながら、設計から生産まですべて自社で行っています。半導体技術が未熟な時代では、自社製品の品質を守るのに貢献度が高かったのですが、今の時代では、自社ですべて行うのが、業績の悪化をもたらしています。半導体業界の統合の必然性を語りましたが、EDAベンダーにとっては、決していいことではありません。2社が1社に統合した場合、売上は自然に減ってしまいます。

日本のEDAベンダーはどういう戦略を取るべきか?

この不況のなかでも、業績を伸ばしている強いEDAがいます。研究開発に高い技術を提供しているベンダーとローコストソリューションを提供しているベンダーであります。日本におけるデザイン数が増えない限り、EDAベンダーの売上は伸びません。最近、技術力を付けて来た海外のデザインハウスに設計がかなりの数で流れており、その流れは止まりません。こういう流れを止めない限り、日本の将来は無いかと思います。

 EDAベンダーは、ツール提供に止まらず、トータルソリューションと設計ノウハウまで提供すべきであります。EDAベンダー各社、自社ツールだけのトータルソリューションを提供していますが、設計現場では実用性が薄くなります。実際、設計にはEDAベンダー各社のいろんな製品の組み合わせが使われています。ここで、力を発揮できるのが設計サービスを中心とした中小企業であり、中小企業にとっても、ビジネスチャンスを掴むことができます。

 最近、悪いニュースばかりで、同業の中小企業からは、仕事がないかという問い合わせが増えています。半導体業界の不況がまず中小企業を直撃し、今年をどうやって乗り切るか、どうやって仕事を確保するか、経営者を悩ませています。大手が予算を削ると、大手に頼っている中小企業は仕事が減り、死活問題になってしまいます。但し、先に述べたように、中小企業にはまだまだチャンスがあると思います。自分の強い分野を生かし、どういう提案ができるかが重要だと思います。まず、EDAベンダーの協力を得れば、提案もしやすくなり、また新たに顧客開拓も可能になります。EDAベンダーにとっても、新しいソリューション提案と共に他社製品との融合ができ、現場にもう一歩近づくことができます。中小企業同士でも連携を深め、お客様に新たな提案を行うことが必要だと思います。

昨年末から、弊社はEDAベンダー、同業他社と連携を計っています。お互いに顧客の悩みを共有し、技術交流、自社がカバーできない分野のご協力を得ております。また、こういう時代からこそ、技術力アップ、ネットワーク拡大を計るべきだと思います。例えば、弊社は匠ソリューションズとパトーナ関係を結んでおりますが、弊社が足りない部分を他社との連携で補完することで、高位合成、第3者検証、RTL->GDSIIまでのトータルソリューションを実現しています。

シンコムと匠ソリューションズのパトーナ関係:
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 最後に。昨今、ワークシェアリングが流行っていますが、中小企業同士でリソース・技術などのシェアリングが必要かと考えています。一社で悩むより、他社と連携し、知恵を絞ってビジネスチャンスを生み出すのが、中小企業の生き残る道の一つでもあると思います。暗いニュースばかりですが、私はまだまだチャンスがあると思います。未来に向けチャレンジして行きたい、そう考える企業と協力して行きたいと思います。

<筆者プロフィール>
株式会社シンコム 代表取締役 林 誠(はやし まこと)
日本シノプシス株式会社、マグマデザインオートメーション株式会社のアプリケーションエンジニアを経て、シンコム社を設立。組み込み、FPGAの設計、検証、論理合成、レイアウトの経験を生かし、設計コンサルティング、設計サービスをお客様に提供。