SNUG Japan 2017 キーノート:Smart, Secure Everything from Silicon to Software
2017年9月8日、日本シノプシスは都内のホテルでプライベート・セミナー「SNUG Japan 2017」を開催した。
ここではイベント冒頭に行われたSynopsys米国本社社長兼CEO Dr. Chi-Foon Chan氏のキーノートについて紹介する。
講演タイトルは、「Smart, Secure Everything from Silicon to Software」であり、近年同社のキーワードとなっている「Silicon to Software」を強調する内容だった。
まずChi-Foon Chan氏は講演の冒頭に下記スライドを提示。SynopsysはEDAの世界のトップランナーであり、EDAというソフトウェア製品でビジネスを成長させていることを強調した。ちなみに度々出てくる話ではあるが、同社はIPの世界でもARMに次ぐシェア第二位の企業となっている。
続いて示した下記スライドは、EDAでトップに立ち、IPでもその地位を固め、次なる狙いはソフトウェアという同社の戦略をよく表していると言える。では、具体的に広大なソフトウェアの世界でSynopsysはどのようなポジションを狙っているのだろうか?
講演の中でChi-Foon Chan氏がキーワードとして挙げたのは、「Automotive」、「Software Signoff」、「Security」の3つだった。
少し話は逸れるが個別のインタビューにてChi-Foon Chan氏に話を聞いたところ、Synopsysにおけるソフトウェア関連事業の売上比率は現時点で全売上の10%以下との事。ここで言うソフトウェア関連事業とは同社が「ソフトウェア・インテグリティ」として分類するソフトウェアの品質チェックやセキュリティ対策に関するツールやサービスだ。下記スライドの通りSynopsysはこの3年間でソフトウェア関連の企業を8社買収しており、着々とソフトウェア関連事業の足場固めを行っている。売上は未だ少ないがその成長率は前年比20%近いという事で今後に対する期待は高い。
では、Synopsysの「ソフトウェア・インテグリティ」ソリューションとChi-Foon Chan氏が挙げたキーワードとの繋がりを見てみよう。
まず「Automotive」については、「ソフトウェア・インテグリティ」に限らず同社主力のEDA/IPも様々な形でソリューションを提供している。近年特に「Automotive」の世界で話題に上がるのが機能安全規格「ISO 26262」の話だが、Synopsysも「ISO 26262」については下記スライドの通り「ソフトウェア・インテグリティ」も含めた形でその対応に注力している。「ISO 26262」以外にも各種車載規格への対応という側面で車載ソフトウェアのセキュリティについても取り組みを進めているという。
次に「Software Signoff」というキーワード。これはSynopsysが打ち出した考え方で、ハードウェア設計の世界のように、ソフトウェアの開発、サプライチェーンにおいても「Signoff」が必要ではないかという提言。Chi-Foon Chan氏は自動車部品のサプライチェーンを例に挙げ、自動車部品のようにソフトウェアにおいても不良・故障のトレーサビリティのための「Software Signoff」が必要であるとし、そのためにはテスト可能な基準と試験方法、そしてツールを確立することが重要だと語った。Chi-Foon Chan氏によると「Software Signoff」には同社がEDAで培ってきたノウハウを活かすことが可能で、既にSynopsysには「Software Signoff」を実現するためのツールが揃っているという。
「Security」については講演の中で深くは触れられなかったが、Chi-Foon Chan氏によるとSynopsysはソフトウェアのデベロッパー側へのソリューション提供者というポジションを取っており、ソフトを開発する上でのセキュリティ対策に関するソリューションや開発したソフトのセキュリティ品質をチェックするためのソリューション等を提供しているとの事。既にその存在はソフトウェア・セキュリティの世界でも認知されているようで、調査会社米ガートナーはSynopsysをアプリケーション・セキュリティ・テストにおけるリーダー企業の一つと位置付けているという話だった。(下記画像参照)
ちなみにChi-Foon Chan氏の後に講演したARMのテクノロジー・サービス・グループGM Dr. Hobson Bullman氏によると、ARMも同社の「Mbed IoT Platform」の構築においてSynopsysの静的解析ツール「Coverity」と脆弱性のテストツール「Defensics Fuzzer」を活用しているという。
なお、Chi-Foon Chan氏は当然ながらキーノートの中で屋台骨であるEDA/IP事業に関する近況も紹介。以下のようなトピックスが目に止まった。
時代は5nm以降へ
CustomSimにMachine Learningを適用
Hybrid Emulationにより僅か28分でOSブート
ISO26262対応
車載向けIPを拡充中
※画像は全てSynopsys提供のデータ(Chi-Foon Chan氏写真はEDA Express撮影)