DSF2015で元エルピーダ社長坂本氏が語った次に生き残る半導体メーカーは
2015年10月2日、新横浜のホテルで今回が2回目となるセミナー「Design Solution Forum 2015(以下DSF2015)」が開催された。
ここでは、元エルピーダメモリ社長、現ウィンコンサルタント株式会社 代表取締役 坂本 幸雄氏による基調講演「次に生き残る半導体メーカーは」についてレポートする。
イベント当日の悪天候により坂本氏の到着が遅れ、15分遅れで始まった坂本氏の基調講演。開口一番、「2時間くらい講演時間があると思ったが40分しかなかった」と語り、自らの経歴を簡単に紹介した後に、半導体業界における日米差について話を始めた。
長年Texas Instrumentsで仕事をしてきた坂本氏が指摘した日本企業と米国企業の差は幾つかあるが、基本的には米国企業を見習えという考えで、中でも技術者が昇進して人事管理がメインとなってしまう状況や入社直後から始まる上司と部下の従弟的な関係など、日本企業の慣習には危険な側面があるとコメント。また、エンジニアリングの力を引き出すにはトップマネジメントと現場との距離も大事であるとした。エルピーダを買収したMicronでは、経営トップが現場と会話する光景が日常的に見られるという。
企業経営に関しては、透明性を高めるために社外重役の登用に積極的な米国企業に対し、日本企業は閉鎖的であるとし、世間を賑わせた東芝問題については社長の決め方や罷免の仕方が問題の本質であり、ギリギリの目標を狙ってチャレンジする事は当然だと私見を述べた。また坂本氏は企業を経営するには社長=CEOと同じくらいCFOも重要であると付け加えた。
エルピーダメモリの件に関しては講演時間の関係もあり、あまり多くを語らなかった坂本氏だが、一時期は150億円まで減った会社のキャッシュも最終的には2000億円程度まで増え、それをうまく買収したMicronは非常にハッピー。キャッシュが無ければ会社更生法に行く事すらできないと、暗に経営者としてギリギリのラインは死守した事を示唆した。
講演の本題である今後生き残る半導体メーカーを語るに当たり、まず坂本氏は現在生き残っている半導体メーカーを大きく4つのタイプに整理した。(※下図参照)そしてこれらタイプの企業が生き残るためには更に3つの要素が重要になるとし、ローパワー技術、パッケージ技術、そして早い開発サイクルを挙げた。パッケージ技術とは、顧客の要求システムに対して部品単品ではなくモジュールで製品を収める事ができる力という事だ。
今後の半導体業界のトレンドについては、日本で生き残るのはNANDフラッシュとCMOSイメージセンサとし、これ以外の分野の弱体化は避けられないとした。また米国が強いASSPは中国・台湾へと勢力が移り変わり、DRAM/NANDフラッシュもいずれ中国に流れ、台湾はファウンドリのみになる可能性が大きいとした。坂本氏によると、これまでは各分野の上位3番目までは生き残れたが、いずれ上位2番目までしか生き残れなくなるという。
講演の締め括りに坂本氏が語ったのは、ひとり言とことわった上での聴講者へのサジェッション。まず他国との差を理解し、その差を価値として取り込める国際人たれとコメント。更に科学者ではなく技術者として会社に利益をもたらすべしとし、企業としては国内に留まらず世界中のリソースをうまく使い切る国際企業にならなければいけないとした。
最後に坂本氏は、「皆さんの今後の可能性は少ない」としながらも、限りなくゼロになってしまったここからがスタートだとして、視点を変えよう、そしてお客が思っている以上の製品を作ろう、それが生き残る道だと語り基調講演を終えた。