【49DAC】個別の検証問題に特化した「JasperGold App」-6/29日本でセミナー開催

第49回Design Automation Conferenceに出展していたJasper Design Automationブースのレポート。

Jasperは49DAC開催前の5月に新製品「JasperGold Apps」を発表。DACでは同製品の話題が中心となっていた。

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※画像は49DACでのJasperブースの様子

Jasperによると、これまで旗艦製品として提供してきた「JasperGold」が総合的なフォーマル検証・ソリューションであったのに対し、今回発表された「JasperGold Apps」は、論理検証における様々な個別の問題に特化した専用ツールで、現在下記6種類の「JasperGold Apps」を提供中。各アプリは共通のGUIを使用しており、使用しているデータベースも共通であるため、アプリ間の連携も可能。そのメリットは特定の目的をシンプルに解決出来る事にあり、Jasperはリーズナブルな価格設定による費用対効果も大きいとする。ちなみに、価格はアプリ毎に個別に設定されており使用本数により幅があるようだが、安いものでは年3000ドルからという事だった。

【提供中のJasperGold Apps】

・ Formal Property Verification App:基本的なアサーション検証
・ Connectivity Verification App:接続検証
・ X-Propagation Verification App:RTLでX伝搬の網羅検証
・ RTL Development App:設計時のダイレクトテスト
・ Control/Status Register Verification App:レジスタ検証
・ Architectural Modeling App:アーキテクチャ検証

尚、この「JasperGold Apps」は、既に大手顧客によって利用されており、ブースではST Microelectoronics、NVIDIA、ARM、Broadcomらが「JasperGold Apps」のユーザー事例を発表していた。(後述の6/29セミナー・レポート参照)聞くところによると日本国内にもユーザーがいるという話で、Jasperとしてはユーザーのニーズに応じて順次アプリ数を増やしていく計画。既に8月には更に2種類の「JasperGold Apps」が追加される計画と聞いた。

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※画像は49DACでのJasperブースの様子


■6/29 JASPER Seminar2012 

Jasperは、6/29に新横浜のホテルで同社の日本代理店である株式会社シンコムと共にJASPER社の製品紹介セミナー「JASPER Seminar2012」を開催した。セミナーでは、Jasper本社並びにシンコムのメンバーにより、「JasperGold Apps」を含むJasper製品の紹介や事例紹介が行われ、70名ほどの参加者を集めた。

やはりセミナーの中心となったのは「JasperGold Apps」の話題であったが、49DACで紹介された大手ユーザーの事例が興味深かった。以下、事例の概要を紹介する。

ARMはJasperのヘビー・ユーザーとして知られているが、昨年11月にARM ACEプロトコルの仕様検証などを目的にJasperとの契約を強化。ARMではプロトコル検証に限らずJasperのツールを設計初期からポストシリコンまであらゆるところで使用しており、何千というプロパティの検証状況が自動的にレポートされる仕組みが社内に構築されているとの事。その検証手法はARM Cortex R7 MP Core, Cortex A15などの開発にも適用されているという。

NVIDIAもJasperの大口顧客の一つで、事例として紹介されたのは、低消費電力化のために挿入したクロック・ゲーティングが機能に影響を及ぼさないことをJasperツールで網羅的に検証するというもの。NVIDIAでは、全てのプロジェクトでJasperツールを用いてクロック・ゲーティングやX伝搬の検証を行うことになっているようで、2009年から超大規模ロジックでJasperのフォーマル検証が利用されているという話も紹介された。

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※画像は6/29 Jasperセミナーの発表スライド

ST Microelectoronicsの事例では、Jasper LPV(Low  Power Verification)という新しい「JasperGold Apps」が紹介されていた。同アプリはSTのニーズに応じて開発が進められているもので、低消費電力デザインの検証を目的にパワー記述フォーマットの標準規格「CPF」および「UPF」をサポート。X伝搬検出も利用しており、いずれ製品としてリリースされる可能性がある。

Broadcomの事例として紹介されたのはFIFOの検証。Jasperの非同期状態をモデリングする検証モジュール( Frequency Jitter PA)とデータ転送のための検証モジュール(Scoreboard PA)を利用することでシミュレーションでは不可能だった網羅検証を行うことが出来たとの事。

尚、セミナーでは今後製品化予定の新たな2種類の「JasperGold Apps」が紹介された。一つは「Property Synthesis」でRTLやシミュレーション結果からプロパティを自動生成するアプリ。この機能は元々「JasperGold」には無かったもので、別製品「ActiveProp」で実現されていた機能がアプリ化された形だ。シミュレーションのホールをレポートする機能も備えるという。

もう一つのアプリは「Coverage Metrics」で、文字道りフォーマル検証のカバレッジ解析を行うもの。Accelleraが49DACで発表したカバレッジ標準「UCIS 1.0」をサポートし、シミュレーション結果なども取り込みながらカバレッジの指標をレポート可能なようで、その詳細は今後明らかになる予定。
※UCIS:Unified Coverage Interoperability Standard

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※画像は6/29 Jasperセミナーの様子


株式会社シンコム(Jasper製品日本代理店)

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2012.07.06 )