【EDSF2011】展示ブースレポート 検証ソリューション編

2011年11月16-18日、パシフィコ横浜で開催されたEDSFair 2011NovおよびEmbedded Technology 2011に出展していた、検証関連製品を展示していた企業のブース・レポート。
・株式会社スピナカー・システムズ
スピナカー・システムズは、Embedded Technology 2011にブースを構え、この11月より取り扱いを開始したイスラエルvSync Circuits社のCDC(クロック・ドメイン・クロッシング)設計・検証ツール「vGenerator」、「vChecker」を展示していた。同社のソリューションの特徴は、既存のCDC検証ツールのようにシミュレーションでは検証できないCDC問題を静的に検証すると同時に、その解決策として同期ロジックを自動生成してくれる点。
「vChecker」はCDCの静的検証とCDCの管理を行うツールで、「vGenerator」は各プロトコル・インタフェース要求と対象CDCに対して、絶対に危険のない同期用のシンクロナイザを自動生成する事が可能。両ツールを組み合わせて利用すれば、安全なCDCインタフェースのデザインを実現できる。
「vChecker」および「vGenerator」は、Verilog,SystemVerilog,VHDLをサポートしており、「vChecker」による静的検証はRTLとゲート・レベルに対応。「vGenerator」はメジャーなFPGA設計フローをサポートしており、ランダム検証用のシミュレーションモデルや合成制約の自動生成機能も備えている。
スピナカー・システムズの片桐社長によると、vSync Circuits社のCDCソリューションを利用すれば非同期設計が非常にラクになるため、非同期設計によって回路の低消費電力化を実現しているユーザーもいると聞いた。
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※画像は「vGenerator」および「vChecker」の説明パネル
・CMエンジニアリング(株)
CMエンジニアリングは得意分野である検証ソリューションをはじめ、幾つか初めて目にするサービスを紹介。ブースはなかなかの人の入り様で熱気を帯びていた。
まず目を引いたのが、ミックスド・シグナルLSIのターンキー・サービス。これは設計サービスでも実績の高い同社の強みを生かしたサービスで、製品の小型化や低消費電力化、ディスコン製品の再設計などのニーズを意識したもの。短納期・低コストをうたう同サービスでは、仕様設計からGDSIIまでをCMEが対応。その先の製造に関しても面倒をみてくれる。
また、ミックスド・シグナルLSIのターンキー・サービスとも関連性ある新サービスがIPリフレッッシュ・サービス。同サービスは回路データ(CまたはRTL)から仕様書を起こし、更に回路の最適化、検証まで実施してくれるというもの。再利用が困難であった既存資産の復活などをCMEが手助けしてくれるという。
いずれのサービスも検証および設計エキスパート集団としての同社のノウハウが活かされたものと言えるが、同社はそのノウハウを出展社セミナーでも披露。「仕様書の書き方のコツ」、「アナログモデリング手法による開発TAT短縮のコツ」、「消費電力削減のコツ」などを紹介した3種類の出展社セミナーはいずれも好評だったようで、初日の「仕様書の書き方のコツ」は立ち見の出る盛況ぶり。「消費電力削減のコツ」では、乗算器1個のレベルからコツコツやる「節電式」のローパワー手法の他、「ローパワー・リフレッシュ・サービス」なる既存資産のローパワー化サービスも紹介されていた。
CME社の長谷部氏によると、検証キット「SAQuT!」シリーズ製品も好調で、後発のアナログモデリング向けのキット「SAQuT! AMS」も引き合いが多く、実績が出始めていると聞いた。
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※画像はCME社の展示パネルとセミナー資料抜粋
・日本イヴ(株)
EVEのブースではEDSFair2011が初披露となる新製品「ZeBu-Blade2」を大々的に展示していた。「ZeBu-Blade2」は、Xilinxの40nmFPGA「Virtex6」をベースにしたエミュレーション・プラットフォームで、Virtex-6を5個または9個搭載する2種類の製品があり、それぞれ1800万および3200万ASICゲートのデザイン容量を備えている。
展示されていた「ZeBu-Blade2」の筐体は確かに小型でデスクトップサイズと呼べる大きさ。このシステムで最高40MHzに達する高速エミュレーション性能を実現。デザイン容量的には現在のASICデザイン規模の約70%はカバーできるだろうとの話で、その費用対効果には絶対的な自信を持っているという。
尚、EVEはEDSFair2011の最終日に近隣のJAZZクラブでパーティーを開催。同社の顧客やEDA業界関係者など100人を優に超える参加者を集めた大規模なパーティーで、ショーありコンテストあり、同社の本社CEOであるLuc Burgun氏がバンド演奏を披露するなど、DAC名物のDenaliパーティーさながらの盛り上がりを見せていた。
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※画像は「ZeBu-Blade2」の筐体と展示の様子
・スプリングソフト(株)
SpringSoftのブースでは、今年5月に発表したプロトタイプボードのデバッグ・ソリューション「ProtoLink」が展示されていた。「ProtoLink」は、FPGA内部の信号をFPGA内のブロックRAMを使用することなく大量かつ高速にプローブする事ができるツールで、論理合成・配置配線を繰り返すことなくプローブポイントを変更する事が可能。ブローブしたデータを元に同社のデバッグ環境「Verdi」上で論理回路をRTLベースでデバッグすることができる。
SpringSoft KK社長の河原井氏によると、「ProtoLink」は既に海外顧客の導入実績があり日本国内の顧客からも引き合いが多数あるとの事。また、富士通セミコンダクターのデザインサービス「Cedar-ESL」でも、ESL環境とFPGAボードを繋ぐキーとなるツールとして採用され話題を集めていた。同社ではコ・エミュレーション環境の実現に向けた取り組みに力を注いでいるという。
また今年10月に開設した「Verdi」向けカスタム・アプリの開発・利用促進サイト「VIA Exchange」については、現在SpringSoft自ら開発した「Verdi」向けのカスタム・アプリケーションをWeb上にアップしており、予定では200種類ほどのアプリケーションがWeb上に登録される計画との事。同サイトは現場設計者に限らず学生の利用者も多いと聞いた。
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※画像はSpringSoftブースの展示の様子と、富士通セミコンダクター「Cedar-ESL」のブローシャ。
・アルデック・ジャパン(株)
Aldecのブースでは、UVMサポートを発表したばかりの論理シミュレーター「Riviera-PRO 2011.10」、「Riviera-PRO」とエミュレーション・プラットフォーム「HES」を接続して効率的なデバッグ環境を提供する「HVD(Hardware Visibility-based Debugging)」テクノロジなどが紹介されていた。「HVD」は今回のEDSFair2011が初披露だった。
UVMサポートに伴い「Riviera-PRO」ユーザー向けに用意されるUVMレジスタ・キットは、UVMのスターター・キットとして、OVMからUVMへの検証環境の移行を手助け。OVM/VMM相互運用キットは、既存資産にラッパーを被せるイメージでOVMおよびVMMベースIPの単一環境動作を実現する。
Aldecでは現在キャンペーンにより、FPGA設計向けの論理シミュレーター「Active-HDL」のDesigner Editionを定価の半額の¥99,000ーで提供中との事だった。(2012年3月末まで)
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※画像はAldecブースの様子
・プロトタイピング・ジャパン(株)
プロトタイピング・ジャパンは、エイシップ・ソリューションズと共同でJEVeCビレッジ内に出展。主軸のプロトタイピング・ボード製品のほか、複数の製品を展示していた。
プロトタイピング・ボードとしてはAltera版とXilinx版の双方をラインナップする米S2C社の製品、コストパフォーマンスの高いAltera搭載の米IRIS Technologies社の製品、Alteraベースでミドルエンドのデザインを狙う台湾Terasic Technologies社の製品、ARMアプリケーションのプロトタイピングに強い韓国Huins社の製品を展示。
更に今年6月よりパートナーとして営業窓口を担当することになったエイシップ・ソリューションズの互換プロセッサIPや、某大手メーカーが開発し外販を検討しているという「液晶パネル用のLVDS高速インタフェース」、硬貨サイズの超高密度モジュールの製作サービスなど、プロトタイピング・ソリューションに限らず様々な製品/サービスが展示されていた。
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※画像は韓国Huins社のボードと展示パネル
・(株)アイヴィス
アイヴィスのブースでは同社の取り扱う、TCAD、SW電源回路設計・解析ツール、設計IP、組込みソフトウェアのテスト自動化ツールなど様
々な製品を展示していたが、崔社長に「最近引き合いの多い製品は?」と聞いたところ、真っ先に出たのがSiSoft社のシグナルインテグリティ解析ツール「Quantum Channnel Designer」だった。
SiSoft社は、元DECでAlphaプロセッサを使った高速システムを設計していたメンバーが中心となり1995年に設立された会社で、高速システム設計向けのノウハウをベースにEDAツールを開発し、コンサルティング・サービス等にも活用している。
「Quantum Channnel Designer」は、5Gbps超の高速シリアル・リンクのSI解析ツールで、IBISモデルを用いたシミュレーションによりSPICEでは不可能な解析を実現。SerDes IPベンダなどは、業界唯一の高速シリアル・リンクのSI解析ソリューションとして「Quantum Channnel Designer」に頼らざるを得ない状況にあるという。
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※画像は「Quantum Channnel Designer」の説明ボード

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2011.12.09 )