【DACの話】カリプト、独自のシーケンシャル・アナリシス技術で不況下でも売上げ増

第46回DAC(Design Automation Conference)における米Calypto Design Systems社の話。

市場全体の売上が明確な下降線をたどる中、前年比200%の売上(?2009年4月までの1年間)を達成したというカリプト。ケイデンスの参入もあり、高位合成ツールのユーザーが増加する中で、高位合成前後の等価性検証のニーズに対応した「SLEC System-HLS」の売上が伸びているほか、独自のLowPowerソリューションが実績を上げているという話で、LowPowerソリューションとしてはDACの約1ヶ月前に新製品「PowerPro MG」を発表し、更なる攻めの姿勢を見せている。

カリプトのLowPowerソリューションは、RTL対RTL、各種C対RTLの等価性検証で培った独自のシーケンシャル・アナリシス技術を利用して生み出されたもので、既に多数の実績を誇る「PowerPro CG」と発表されたばかりの「PowerPro MG」の2製品がある。

「PowerPro CG」は、自動的にクロック・ゲーティングを追求しRTLレベルでダイナミックな消費電力の削減を実現するツールで、ARMに代表される各種IPのカスタム/最適化に利用し製品の差別化を図るユーザーが増えているとの事。カリプトでは、この「PowerPro CG」のLowPower機能を最大限引き出す手法として、クロック・デーティングを効かせるために論理合成ツールのリタイミング機能を利用するという独自の消費電力最適化フローを提唱しており、その効果を実証している。(挿入図参照)
同手法では、ARM Coretex A9で28%の電力削減に成功したという結果もあり、新しいIPほど効果があるという。

 

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新製品「PowerPro MG」は、オン・チップ・メモリの消費電力を削減するツールで、ダイナミックな電力消費と合わせてスタティックなリーク電流の削減を実現するもの。具体的には、シーケンシャル・アナリシス技術を用いて不必要なメモリ・アクセスを検出し、それを発生させないような論理をメモリ周辺に追加する事でダイナミックな電力消費を削減。更に、不要なメモリ・アクセスを減らした結果をふまえ、動作モードを通常モードからライト・スリープ・モードに移行する論理を追加する事も可能で、モード移行に伴う電力消費とライト・スリープ・モードで削減可能なリーク電流を比較し、タイミングも考慮した上で最適化を実行してくれる。
カリプトによると、チップ内に計14個のメモリモジュールがあるデザインで「PowerPro MG」を適用したところ、トータル的なメモリの消費電力を40%削減する事に成功したという。

 

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カリプトは、LowPower関連とESL関連という市場の期待も大きく、業界でも今後の成長が予測されている2つの分野に跨って製品を提供する珍しいベンチャー。新製品を投入したばかりだが、シーケンシャル・アナリシス技術を用いた更なる製品展開に今後も期待したい。

※カリプト・デザイン・システムズ株式会社

 

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2009.10.08 )