車載アプリ開発の鍵は設計メソドロジ、システムの品質を決めるのはESL>>コーウェアESL Show2007

2007年8月31日、ESLツール大手のコーウェアは、都内のホテルで「ESL Show 2007」を開催。コーウェア最新のESLソリューションの紹介に、定員を上回る180人近くの業界関係者が集まった。

ESL Show 2007関連ページ:http://www.coware.co.jp/ESLShow2007/index.htm

「ESL Show」は、コーウェアの製品ラインナップを一堂に紹介するイベントで例年この時期に開催。変化のスピードが速いESL分野において、毎年何かしらの新しい技術や話題が紹介されている。今年のESL Showでは、11月に一斉リリースされる予定の各製品の次期バージョンの概要が明らかにされた。

コーウェアによると、主力製品である仮想プラットフォームの開発環境「Platform Architect」の次期バージョン2007.1では、新たに仮想プラットフォームのリファレンスモデルが用意されたほか、場合によっては数百個にも及ぶバス・トランザクタの挿入を自動化する機能も追加。また、バスアーキテクチャをGUIベースの作業で自動生成する「BL Wizard」が用意され、バスについての専門知識が無くても、とりあえずバスモデルを作り接続できるなど、仮想プラットフォームの開発環境として、慣れない設計者でもプラットフォームの最初の作り出しが容易になった。

また、既存のSystemCデバッガからEclipce機能を取り外した新しい軽量高速デバッガもリリースされる予定で、昨年波形ビューワが用意されたTLMデバッグ機能も更に機能強化が施され、トランザクションとピンとのクロスプロービングも実現されるという。

ソフトウェア開発者向けの「Virtual Platform」は、更なるシミュレーションの高速化が図られ、次期バージョン2007.1では従来比1.5倍の速度を実現する予定。既にUSでのベンチマーク結果では従来比2倍以上の速度が出ているとの話で、画像処理などのアプリを現在の実機レベルよりも更に速く動かす事が可能となる。また、ソフトウェア向けの新たな解析機能やシミュレーションの設定の手間を省くリスタート機能、マルチコアデバッグ機能、インターネットへのアクセス機能など、ソフトウェア開発者向けに複数の新機能が追加される予定となっている。

その他、アルゴリズム開発環境「Signal Processing Designer」とカスタムプロセッサの開発環境「Processor Designer」も合わせてバージョンアップされる予定で、「Processor Designer」では、OCPバスに対応したRTL接続用のアダプタ(ポートに対応)を生成する機能が追加され、よりスムーズに「Platform Architect」へ生成したプロセッサモデルを移植できるほか、ゲーテッドクロック可能なスクリプトを出力するなど、生成するプロセッサの低消費電力化を狙った新機能も追加される予定だという。

尚、今回のESL Showでは、株式会社デンソー、IC技術1部 IP開発室 室長 石原 秀昭氏が「自動車エレクトロニクスの将来展望とシステムLSI高位設計への期待」というタイトルにて基調講演を実施。プロセッサの専門家としてトヨタ内製のプロセッサコア「NDR」の開発に携わってきた立場から、コンシューマ向けプロセッサではなく自動車向けにカスタムされたプロセッサの必要性を訴えると同時に、システムのパフォーマンスを左右するESL技術(高位設計技術)の重要性を強調。「作るシステムも複雑となり、設計ツールも複雑となった現在、設計メソドロジはシンプルであるべき」とした上で、「見ている人とそうでない人がいあるが、今後は高位設計技術を用いたメソドロジが鍵」と語り、車載アプリの開発現場におけるESL技術への熱い期待を顕にした。

※コーウェア株式会社
http://www.coware.co.jp

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2007.09.05 )