出来ない事の方が少ない?商用化に成功したC言語設計環境「CyberWorkBench」の最新ロードマップをNECシステムテクノロジーが発表
2007年10月24日、NECシステムテクノロジーと図研は、東京コンファレンスセンターにて「CyberWorkBenchフォーラム2007」を開催。定員を超える140名近くの参加者を集め、C言語設計環境「CyberWorkBench」の最新アップデート、ユーザー事例、ロードマップを発表した。
イベント関連ページ:http://www.cyberworkbench.com/seminar/forum2007.htm
NECシステムテクノロジーの提供する「CyberWorkBench」は、NECの内製ツールとしてその存在は広く知られていたが、商用EDAツールとして発売されたのは昨年9月と市場に流通するEDA製品としての歴史は浅く、これまで話題と期待は集めていたが、その本当の実力については未知数とされていた。しかし、製品リリースから早1年が経ち、売り上げ実績やユーザー事例からその実力が徐々に明らかになってきた。
Cyberのビジネス状況について講演した、NECシステムテクノロジーの小島 智氏によると、Cyberの累積顧客サイト数は既に10サイトを超え2ケタに到達。当然ながらNECグループ外のユーザーが多数存在しており、2007年上期の売上は前期比100%増と倍の数字を叩き出しているとの事。また、同じくNECシステムテクノロジーCWB事業推進室長の山内 久典氏とCyber開発責任者の若林 一敏氏に聞いたところ、既に商用チップの開発にCyberを適用している顧客も多く、秋葉原に行けばCyberで設計したチップを搭載した民生品が色々と並んでいるとの話。DACへの出展など、当初から海外展開も視野に入れているが、現状は国内新規ユーザーへの対応が忙しくそれどころではないとの事だった。
そのような「Cyber商用化」の好スタートを受け、NECシステムテクノロジーでは、設計文化の壁を越えた「C言語設計フォーラム」の形成を目指し、Cyberの入力言語として使用される「BDL」のオープン化を計画中で、マニュアルのチューンナップなど準備を整えた上で将来的にはIEEE標準化も目指す。また、既に実施しているC言語設計の教育プログラムの他に、今年11月から無料のCyber体験セミナーも開催する予定で、C言語設計手法の普及活動にも注力。更に、Cyberを取り巻くパートナーの拡大と関係強化にも取り組んでいるという事で、同イベントには、販売代理店である図研の他に、礎デザインオートメーション、インターデザイン・テクノロジー、VaST Systems Technology、コーウェア、シーケンス・デザイン、日立情報通信エンジニアリングの計6社がEDAパートナーとして参加していた。
気になるCyber本体の話については、最新バージョン4.xの新機能と次期バージョン5.0以降のロードマップを中心に若林氏が講演。単なる動作合成ではないC言語設計の統合環境を目指すというコンセプトの下、「プロがやりたい事は全て取り込む」という方針でCyberの開発を継続中で、既にコアとなる動作合成機能の他に、Cレベルの「形式的プロパティ検証」、「ハード/ソフト協調シミュレーション」、Cと合成したRTLの「形式的等価性証明」、Cからの「テストベンチ生成」といった機能を実装済み。中でもCとRTLの等価性プルーバは、動作合成の技術を駆使した強力な機能という事で、実際に数MゲートのPCI Expressの設計に適用したところ、10万行の動作記述(Cコード)と合成した100万行のRTLの等価性を擬似エラー0で証明できたという。
また、現バージョン4.2では、「階層合成機能」(=関数ごとの並列化)をサポートしており、モジュール単位の合成ではなく大規模回路の合成にも対応可能。更に、バックエンド工程を意識した「配線性考慮の合成」も可能で人手では困難なモジュール間配線の自動共有化という離れ業も実現している。その他、言語対応に関しては、「言語非依存化」をモットーにあらゆる言語に対応して行く予定という事で、既に現在のバージョン4.2ではSystemCにも一部制限付で対応済み。次期バージョン5.0では、SystemCの複数プロセス対応や検証用のサイクル精度のVerilog/VHDLの出力も実現する計画となっている。
尚、2008年Q1リリース予定となっている次期バージョン5.0では、上記言語対応の他にも多数の新機能追加が予定されており、その項目名だけをみても「アーキテクチャ自動探索」、「配線遅延考慮の合成機能」、「RTLフロアプランナ」、「各種動作合成用IP」、「動作IPの暗号化」、「新ソースコードデバッガ」、「プロパティ検証の自動チェック強化」、「等価性プルーバの制御回路対応」と盛り沢山。
大きな流れとしては、既存機能の強化に加えソフトウェア・エンジニア向けにユーザビリティを向上させるという方向性と、チップ全体をC言語で設計するユーザーに向けに新たな機能を追加するという方向性が加わっており、まさに今後のロードマップは「C言語設計の統合環境」としてのCyberWorkBenchの幅の広がりを期待させるものであった。
※ユーザー事例、その他講演内容に関するレポートは別ニュースに続きます。
※CyberWorkBenchに関する詳細は、NECシステムテクノロジー株式会社または株式会社図研にお問い合わせ下さい。
NECシステムテクノロジー株式会社
http://www.necst.co.jp/
株式会社図研
http://www.zuken.co.jp/
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2007.11.02
)