【EDSFレポート】特設ステージ:「今さら聞けない高位合成」

1月23日 EDS Fairの特設ステージにおいて、若手エンジニアや元エンジニア向けのセッション「今さら聞けない高位合成 -一から学ぶ高位合成-」が開催された。

会場は立ち見も多く見られるほどの満員盛況ぶりで、シャープ株式会社 電子デバイス事業本部の山田 晃久 氏は、C言語設計のためのアーキテクチャ探索を始めとする高位合成の基本技術を始め、従来のRTL設計と抽象度を上げた動作レベル設計との違いまでをポイントをうまくまとめながら説明してくれた。

次に、高位合成ツールによる設計適応事例の紹介があり、同社の液晶テレビに搭載されたフレームレート変換機能付きLSIの設計において、回路全体の90%(約2000万ゲート)に高位合成ツール「Bach」を用い、アルゴリズムがフィックスしてからテープアウトまでを約2ヶ月で完了し、リスピンなしで量産ができたという成功事例を披露した。

この適応事例の成功のポイントとしては、アルゴリズム開発と、レイアウトまでを含めたRTL検証が並行してできたことだという。

edsf2009_bach-01.jpgさらに山田氏は、今後の課題として以下の4つをあげて高位合成による設計への期待とした。

・タイミング収束 -高位合成時の見積り精度
・静的検証 -動作レベルとRTLの等価性検証
・ECO(Engineering Change Order)への対応 -抽象度と解析容易性のトレードオフ
・記述スタイルの確立 

最後に、C言語による高位合成設計における3つの留意点をあげ発表を締め括った。

1.「全ての回路をCで設計するのが良いとは限らない。 得意なところでの適応が必要」
2.「良いツールがあれば、良い回路ができるわけではない。人手は必要。」
3.「Cを使えば高速検証ができるわけではない。抽象度を高く記述することが必要」

1980年代後半に登場した論理合成ツールは、1990年代に普及し始め2000年代には大半の回路設計に使われるようになった。同様に、1990年前後、研究レベルから商用ツールとして登場してきた高位合成ツールは、2000年後半になって、ようやく実設計への適応が多々聞かれるようになり、今後の実用レベルでの普及が期待されるステージになってきたと言えよう。

= EDA EXPRESS 特別レポーター =

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2009.02.08 )