MediaTekも利用、実設計で活用されているGoogleのレイアウト設計向けAI「AlphaChip」

2024年9月26日、Googleはレイアウト設計向けのAI「AlphaChip」を発表した。

Google DeepMindの発表

「AlphaChip」は、2020年にGoogleが発表したレイアウト設計向けの強化学習手法を用いるAIで、レイアウト設計におけるフロアプランニングに利用されている。

その仕組みは、Google DeepMindが囲碁やチェス向けに開発したAI「AlphaGo」や「AlphaZero」と基本的に同じで、フロアプランニングを一種のゲームと見立てて強化学習を行いレイアウト結果の品質向上を追求する。

「AlphaChip」は既にGoogleのAIアクセラレータ「TPU」やArmベースのデータセンター向けCPU「Axion」など、Googleが独自に開発するチップのレイアウト設計に用いられているほか、Google以外のユーザーによって世界中で活用されており、MediaTekもSamsungの携帯電話で使用されている「Dimensity Flagship 5G」などの先端チップの設計に「AlphaChip」を拡張して適用し成功をおさめている。

「AlphaChip」は事前トレーニング済みのチェックポイントも含めてGitHubで公開されており、誰でもアクセスすることが可能。(GitHub - google-research/circuit_training

GoogleはTPUのレイアウト設計にあたり、オンチップおよびチップ間ネットワーク・ブロック、メモリ・コントローラ、データ転送バッファなど、前世代の様々なチップ・ブロックで「AlphaChip」を事前トレーニングすることで高品質なレイアウト結果の生成を実現。「AlphaChip」はチップ配置タスクのインスタンスを多く解決するにつれて、より優れた高速な処理が可能になるという。

実際にGoogleの実績として、TPUのレイアウト設計において「AlphaChip」を適用して設計したブロックは世代を追って増えており、配線長の削減率も増えている。

※画像はGoogle DeepMind Webサイト上のデータ

「AlphaChip」の適用は、PPAの改善もさることながら、数週間または数か月かかる人手作業を数時間で完了するなど工数削減の面でもメリットが大きく、この無料の設計AIの活用事例は今後更に増えていきそうだ。

Googleは「AlphaChip」はカスタム・ハードウェアのチップ設計を変革する可能性を秘めているとコメントしており、チップ設計サイクルにおけるフロアプラン以外の最適化についても匂わせている。チップ設計のオープン化を様々な方向で提唱しているGoogleの今後には引き続き注目していきたい。

Google DeepMind

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2024.10.01 )