LSTCが国の補助金でAI半導体の設計者を海外で育成、5年間で200人
2024年6月15日、日本経済新聞は、技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)がAI向け半導体の設計者を海外で育成すると報じた。
記事によると、LSTCは大学院生や企業に所属する30〜40代の現役の半導体技術者を対象に、試験や面接により育成者を選抜し海外で人材育成を実施する。
人材育成はカナダの新興半導体ベンダTenstorrentへの派遣によるOJTの形で行われるようで、派遣された技術者はTenstorrentでAI向け半導体の設計業務に携わる。育成期間(派遣期間)は1~2年で5年間で200人の人材育成を目指す。
この人材育成に対して経済産業省は数十億円の補助金を用意する計画で、派遣前に行う技術者への研修や派遣期間中の技術者の生活費などに充てられる。育成された技術者は派遣期間が終了した後に帰国し、日本国内の通信、自動車関連企業、研究機関などへの就業が想定されているという。
記事によると、このLSTCによる人材育成の目的は、ラピダスの顧客となる日本企業に半導体に精通した人材を増やすため。すなわちラピダスの受注を増やすために行われるということだ。
今回のLSTCによる人材育成の話は、「AI向けの高度な半導体設計者を育成する」というところだけを見れば非常に価値のある取り組みに思えるが、その目的、やり方、スキーム、正直腑に落ちないところがある。
そもそもラピダスありきの話であるため、おかしな形になるのは必然なのかもしれないが、たとえラピダス向けに投じられる1000分の1程度であってもチップ設計者の育成に血税が使われるということで、現時点では良しとしたい。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2024.06.17
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