サブプライム後のEDSFair-今後に向けて今、業界は何をすべきか?
パシフィコ横浜で開催していたElectronics Design and Solution Fair 2009が閉幕した。
出展していたEDAベンダ関係者が口を揃えて「人が少ない」と言うように、1/22-23の2日間の来場者数は前年比約13%減の計9117人(22日3953人、23日5164人)。遂に1万人を割り込んでしまった。
昨今の経済状況により、出張費が出ないといった事情もあるようで、自腹で会社を休んで来たという設計者もいるほど。話によると電気業界の業績悪化の影響でEDSFairの来場者が減った事がテレビ朝日の報道ステーションでも紹介されたとか。。とにかく今年のEDSFairは世間のネガティブな状況を反映するかのように、会場全体的に「明るさ」が乏しかった。
EDAベンダの取材を進める中でよく耳にしたのがやはり売上の減少。「良い評価結果が出たのに受注できなかった」、「発注目前でプロジェクトが流れた」、「ライセンスの保守更新も厳しい」といった話は取材したベンダの半数以上から聞かれ、やはり業界全体として売上の減少傾向が加速しているのは否めない。
しかし、こんな状況下でも前年比売上30%増(EVE)、前年比売上2.5倍(Synfora)、USB3.0セミナーは立ち見の盛況(デナリ)、W/Wで売上上昇(Forte)、EMIソリューションが好調(Ansoft)、北米実績が好調(TOOL)、売上前期超え達成(システムJD)、新規日本顧客複数獲得(コフルエント)、ユーザー数が3倍に(ワンスピン)と独自のソリューションで売上と顧客を掴んでいるベンダもあった。
サブプライム後の経済の混乱はEDAの主戦場である電機業界にも影響を及ぼし、電機業界の停滞と合わせてEDA業界の先行きは更に不透明になりつつあるが、派遣切り問題と同じような感覚で厳しくなったからツールへの投資をストップするというのはいかがなものか? 同じ設備投資と言えども各種生産設備とは違い、EDAは基本的に製品の生産工程の改善・効率化を図るもの。投資が効率化を生み出し、効率化がコスト削減を実現する事を考えると、辛いからツールを買わないというのは本末転倒で、むしろこんな時だからこそ積極的に設計の効率化に力を注ぐべきではないか?
EDA業界は主に電機業界の投資の下で成り立っている業界ではあるが、その逆もまた然り。EDA無くして製品を開発できないのも事実である。こんな時だからこそ、自社の設計プロセス・設計環境を見つめ直し、その改善と強化を図る。電機業界はそんな取り組みを進め、多少なりとも今まで以上にEDAツールに投資してみてはいかがだろう。
大手電気メーカーが幹事であるJEITA主催の展示会で、「人が来ない」、「注文が出ない」という声を耳にするのはいささか寂し過ぎる。
EDA業界としてもやるべきことは沢山ある。今までは取り合いながらもパイが増えていく嬉しい状況下にあったが、今はそのパイ自体が小さくなりつつある状況。顧客の奪い合いをする前に、どうすればよりパイを大きく出来るか?という視点で業界横断的な活動として、各種規格やメソドロジの標準化など技術インフラの構築に勤しんで欲しい。
例えば検証メソドロジ「VMM」と「OVM」、Powerフォーマットの「CPF」と「UPF」これらの相互運用性が確保されれば、ユーザー(設計者)は安心してソリューションを選択できるようになり、結果としてツール販売の促進に繋がっていくだろう。
現場のエンジニアもうかうかしていられない。雇用の危機という目前のリスクをヘッジするためにも、自らのスキルを見つめ直し、エンジニアとしての存在意義を高めていかなければならない。恐らくではあるが、繁忙期と違いスキルアップのための学習時間も取り易いはず。新技術の習得や情報収集、ユーザー同士の交流など、こんな時だからこそ自分への投資にポジティブになってみてはどうか?
日本のエンジニアの技術レベルは世界トップクラスであると言われているが、報酬額にも現れているように、欧米のエンジニアよりも低い地位で扱われている気がしてならない。対EDAベンダに限らず物言うエンジニアとして自らの技術と地位を高めるためにも、会社の枠を超えたエンジニア同士の連携を図っていって欲しい。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2009/01/27 )