CadenceがAI技術の実装など大幅に機能強化したアナログ/カスタム設計環境「Virtuoso Studio」を発表

2023年4月20日、Cadenceはアナログ/カスタム設計の新製品「Virtuoso Studio」を発表した。
新製品「Virtuoso Studio」は、Cadenceの主力製品「Virtuoso」をメジャー・バージョンアップした製品でAI技術の実装をはじめ数多くの機能強化が図られている。
「Virtuoso」は約3年ぶりのバージョンアップとなるが、製品名が「Virtuoso Studio」と命名され、アナログ/カスタム/RF設計のより中心的なツールとしてコックピットのような役割を担うようになった。具体的には、以下に挙げたようなアナログ/カスタム/RF設計を取り巻く同社の各ツールが「Virtuoso Studio」とシームレスに統合され、これらツールの機能を「Virtuoso Studio」からアクセスすることが可能となった。
・回路シミュレータ「Spectre」
・PCB設計環境「Allegro」
・物理検証ツール「Pegasus」
・RF/マイクロ波設計ツール「AWR Microwave Office」
また周辺ツールとの連携としては、「Virtuoso Studio」からデジタル・インプリメント環境「Innovus」を呼び出しロジック・ブロックの配線が可能となったほか、PCB設計環境「Allegro」との連携により3D-IC設計、フォトニクス・システムも「Virtuoso Studio」の守備範囲となった。
新しい「Virtuoso Studio」は、あらゆるプロセス技術において設計生産性を3倍向上できるということだが、Cadenceは下記のようなエンハンス項目によってそれが実現されていると説明している。
・最先端3nmプロセスへの対応
・クラウド対応の強化(分散処理性能の強化)
・アナログ自動配置配線機能の強化
・インデザイン検証(物理検証)の性能改善
・AIを活用したデザイン・マイグレーション
・複数PDKの読み込み対応
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※Virtuoso Studioのレイアウト機能の強化
クラウド対応については、新機能である「Simulation Manager」によりシミュレーション・ジョブの分散処理性能が強化され、省メモリ化など負荷の低減により数千のジョブにも高速に対応できるようになったという話。
AIを活用したデザイン・マイグレーションは今回のバージョンアップの目玉機能で、アナログ回路の実装プロセスを移行する際に既存のレイアウトデータを元にAI技術でバーチャル・プロトタイピング(仮のレイアウト)を作成。それを元に寄生予測と寄生を含めたパラメータの最適化を行い、回路図のマッピングを含めほぼ自動処理でプロセス・マイグレーションを完了できるという。
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※Virtuoso Studioのプロセス・マイグレーション
Cadenceは既にデジタル回路のインプリメンテーション、ベリフィケーション、システム設計といった分野でAI機能のツール実装を実現しているが、アナログ/カスタム設計関連のツールでのAI機能の実装は今回が初めて。「Virotuoso」はCadenceの主力製品なだけに、AI機能を含め今回のバージョンアップが現場の設計をどれだけ変えるのか? 顧客事例の発表が楽しみだ。

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2023.04.20 )