SynopsysがEmbedded Vision向けの新たなローパワー・プロセッサをリリース
2015年3月30日、Synopsysはエンベデッド・ビジョン(Embedded Vision)向けの新たなプロセッサIPコア「EV Processor Family」を発表した。
Synopsysによると新製品「EV Processor」はコンピュータ・ビジョン技術の組み込みに特化したプロセッサで、ビジョン・プロセッシング向けに最適化されたマルチコア・アーキテクチャにより、ハイパフォーマンスかつローパワーな処理を実現。監視カメラ、ADAS、ゲームやバーチャル・リアリティといった様々な分野での利用を想定している。
「EV Processor」は32ビットのRISC CPUと「Object Detection Engine」と呼ぶプログラマブル・ユニットで構成されている。32ビットのRISC CPUは今回Synopsysが独自開発したコアで2コアまたは4コアを選択できる。特徴的なのは「Object Detection Engine」で、エンジンとしては最大8つのPE(processing element)を利用可することができ、機械学習のアルゴリズムであるコンボリューショナル・ニューラル・ネットワークを用いた物体認識が可能。このエンジンを利用する事で高性能なプロセッシングをミリワット・レベルの低消費電力で実現できる。Synopsysによると「EV Processor」は、既存のビジョン・プロセッサと比べて消費電力性能が5倍高い1000 GOPS/ワットの性能を発揮するという。
「Object Detection Engine」に実装されるコンボリューショナル・ニューラル・ネットワーク技術は、予め実施した機械学習のトレーニング/ティーチング結果をインプリする形で実現されており自律学習するものではない。また実装作業はSynopsysに依頼する必要があるが、将来的にはユーザーが独自に「Object Detection Engine」に実装できる開発環境が提供される計画。Synopsysは顔認識や道路の速度標識認識のリファレンス・デザインを用意している。
「EV Processor」の開発環境は、同社のARCプロセッサの開発環境「MetaWare Development Toolkit」を利用できるほか、OpenCVならびにOpenVXライブラリを利用可能。「EV Processor」上での実行に最適化された43のコンピュータ・ビジョン標準カーネルを持つOpenVXフレームワークも提供される。
「EV Processor」はSoCへの統合が容易でホスト・プロセッサへのアクセスやホスト・プロセッサとの同期が可能。またインターコネクト経由でSoC外のデータにアクセスする事もできる。Synopsysは既にプロトタイピング・システム「HAPS」上に「EV Processor」を実装したデモ環境を用意しているが、バーチャル・プラットフォーム向けの「EV Processor」のSystemCモデルも用意しており、これを利用する事で「EV Processor」を用いたSoCのソフト先行開発も可能となっている。
ビジョン・プロセッシングはGPGPUやカスタム・プロセッサを用いて高速処理を実現しているケースがあるが、組み込み用途には消費電力やコストの面で不向きであった。そこを狙ったのが今回Synopsysが発表した「EV Processor」で、小型でありながら、高性能かつ高精度、さらに低消費電力と、既存のソリューションを凌駕する最適なエンベデッド・ビジョン向けソリューションと言える。
Synopsysは5月29日に毎年開催しているASIP関連のセミナーを品川で開催する予定で、同セミナーにて「EV Processor」に関する詳細が紹介される予定。また、同セミナーでは先頃発表されたASIP開発向けの新ツール「ASIP Designer」についても紹介される見通し。
= EDA EXPRESS 菰田 浩 =
(2015.03.31
)