ラピダスがTenstorrentからチップ製造を受注したというのは誤り
2024年2月27日、RapidusとカナダTenstorrentの記者会見を受けて報道各社が「ラピダスがTenstorrentと協業」、「ラピダスが顧客獲得」という内容で報じているが、どうやらそれは本質ではないようだ。
・ラピダスの研究開発を支える技術研究組合「LSTC(最先端半導体技術センター)」がTenstorrentのプロセッサIPを取得(購入)
・TenstorrentからLSTCに提供されるプロセッサIPは「Ascalon」と呼ぶデータセンターグレードの汎用プロセッサIP
・TenstorrentはLSTCによる「Ascalon」を用いたエッジ向けの推論アクセラレータの開発にも協力する
・LSTCが開発したエッジ向けの推論アクセラレータは将来ラピダスの2nmプロセスで製造する
つまり今回の話はラピダスが顧客を獲得したという話ではなく、ラピダスの開発子会社とも言えるLSTCがTenstorrentからIPを購入すると同時に推論アクセラレータ開発の協力も依頼したというのが本質。LSTCが開発したチップをラピダスで製造するのは当たり前で、Tenstorrentが自社製品の製造先としてラピダスを選択したという話ではない。
Tenstorrentが今回の話とは別でラピダスと自社製品の製造について話をしている可能性はあるが、未だ立ち上がっていない歩留まりすら分からないプロセスに製造を決め打ちするということは、よほどの特典がない限り考えられない。TenstorrentからするとLSTC/ラピダスは現状単なる「いいお客さん」だ。