ルネサスがPCB設計ツールのAltiumを約8,900億円で買収へ
2024年2月15日、ルネサス エレクトロニクスはPCB設計ツールを手掛ける米Altium Limitedの買収を発表した。
発表によると今回の買収額は91億豪ドル(約8,900億円)で今年下半期に買収完了の計画。Altiumは1985年創業のオーストラリアのPCBツール・ベンダで、本社は米国に置くがオーストラリアで上場している。
これまではポートフォリオの拡張と製品の相乗効果を目指して半導体ベンダを買収してきたルネサスだが、今回の買収は今までの買収戦略とはその中身が大きく異なる。ルネサスCEOの柴田氏は今回の買収について、「統合されたオープンな開発プラットフォームを提供することが可能になる」とコメントしており、より使いやすい開発環境を顧客に提供することを目指しているようだ。
異なるのは買収目的だけではない。ルネサスは2016年にインターシルを約3,200億円、2018年にIDTを約7,300億円とこれまでも大型買収を繰り返し事業拡大を続けているがその買収金額は売上の5倍〜8倍程度だった。しかし、今回のAltium買収には売上の20倍以上の金額を投じる計算で(Altiumの2023年度売上は約400億円)、ルネサスとしてかなり大きな賭けに出ていることが窺い知れる。
半導体ベンダとして、提供する半導体を動かすソフトウェアやシステムの開発環境を提供するのは一般的だが、PCB設計環境を提供するというのは異色のアプローチで恐らく同様の戦略をとる同業者はいない。今回の買収は単にPCB設計環境を手にいれる訳ではなく、クラウドベースの開発環境を手にいれるという部分にも大きな意味があるように見えるが、大口の顧客の大半はAltium以外の市販のPCB設計ツールを利用しているであろう現状を考えると、その買収効果は未知数だ。