設計ワークロードの最適化でTAT短縮とコスト削減を実現〜半導体設計でも拡がるAltairソリューションの採用事例
米Altair Engineering(日本法人:アルテアエンジニアリング株式会社、以下:アルテア)はミシガン州に本社を置くソフトウェア・ベンダーで、データ分析とAI、CAE、HPCの各分野にソリューションを提供している。エンジニアリング・サービスから発展した同社は製品開発向けのCAEソフトを軸に成長を遂げ、2017年にNASDAQ上場。現在はワールドワイドに3,000人以上のエンジニアを抱えグローバルなテクノロジー企業として1万社を超える顧客企業の製品開発やサービスを支えている。
半導体設計およびEDAの世界では一見馴染みの薄い同社だが、実は大手半導体ベンダー各社にHPCソリューションとして半導体設計ワークロードの管理ツールを提供しており、半導体製品の開発におけるTAT短縮やコスト削減に貢献している。ここではそのソリューションの概要と実際の顧客事例について紹介していきたい。
■半導体設計専用のジョブ・スケジューラ「Altair Accelerator」
アルテアの提供するHPCソリューションの中で半導体ベンダー各社に密かに重宝されているのが「Altair Accelerator」という半導体設計専用のジョブ・スケジューラで、半導体設計ワークロードの最適化に活用されている。半導体設計ワークロードとは、EDAツールを用いて各工程で行われる一連の設計・検証作業そのもので、「Altair Accelerator」は与えられた計算機リソースとEDAツールライセンスを用いて如何に速く、そして無駄なく効率的にツール処理を完了させるかという命題に答えを出してくれる。
例えばEDAツールに実行させるジョブのスケジューリングにおいては、ジョブの依存関係を管理するだけでなく、EDAライセンスの機能や数、計算リソースの状況、ジョブの優先順位などを考慮したスケジューリングが可能。優先実行やリソース予約などの機能により、緊急性の高いジョブを重要度の低い他の設計ワークロードよりも優先させて実行させたり、実行中のジョブを一時停止し、優先順位の高いジョブが完了した時点で再開するといったことも可能だという。
実際に「Altair Accelerator」を導入しているDSPコアで有名なイスラエルのファブレス半導体ベンダ「CEVA」では、「Altair Accelerator」の優先実行機能によりタイムクリティカルなジョブが待機していることを検知し、実行中のジョブに対して取り下げや再投入などの調整を即座に行うといった運用で、シミュレータを用いて365日24時間リグレッション検証を行う環境を構築できたという事例を報告している。この例は高価なEDAツールライセンスを使い倒す究極の形と言えるだろう。(※
参照URL)
また「Altair Accelerator」は、ミリ秒単位で応答するイベント・ドリブン型のスケジューラであるため、数秒単位で駆動するサイクル・ベース型のスケジューラよりも遥かに高速にジョブを投入することが可能。すなわち時間当たりのジョブ投入数を増やし計算機リソースの利用率を向上できるという訳だ。
※画像はアルテア提供のデータ
昨年Marvellに100億ドルで買収された、通信/データセンター向けアナログ/ミックスドシグナル半導体のInphiは、「Altair Accelerator」の導入により設計チームの規模を拡大することなく、より多くの作業をより短時間で行うという設計の効率化を実現。光インターフェイスで使用されるコヒーレントDSPチップやイーサネット・トランシーバーなどの主力製品の早期市場投入を達成したという事例を報告している。
同Inphiの事例によると、「Altair Accelerator」のスケジューラは評価した他のサイクル・ベースのスケジューラよりもスケジューリング速度が10倍速かったという話だ。(※
参照URL)
■エミュレータのワークロードも最適化
アルテアは、ハードウェア・エミュレータ向けのジョブ・スケジューラ「Altair Hero」という製品も提供している。この製品は、異なる設計チーム間でハードウェア・エミュレータを共有して運用する場合に使うフロントエンド・ツールで、ハードウェア・エミュレータのリソースの割り当てを自動化してくれるもの。
「Altair Hero」はEDAベンダの製品に依存せず、Cadenceの「Palladium」、Siemensの「Veloce」、Synopsysの「ZeBu」のジョブ・スケジューリングを管理することが可能。モデルのコンパイル、エミュレータの自動選択、リグレッションの実行など、エミュレーション・ジョブをエンドツーエンドで一元管理することができる。
「Altair Hero」を通じた1つのジョブ・キューで、同一アーキテクチャまたは異なるアーキテクチャの複数のエミュレータ・インスタンスにエミュレーション・ジョブをディスパッチすることも可能で、シミュレータよりもはるかに高価なエミュレータのリソースを最大限有効利用するのに役立つという。
※画像はアルテア提供のデータ
■11/25 Design Solution Forum 2022で講演
アルテアは、来る11/25開催のセミナー・イベント「Design Solution Forum 2022」にて「Altair Accelerator」をはじめとする同社の半導体設計向けソリューションについて講演を行う予定。
講演タイトル:「米国大手半導体メーカが採用する、高スループットなEDAジョブワークロード管理ツール」
講演者:アルテアエンジニアリング株式会社 エンタープライズ事業部 渡邊 大祐
講演時間:11/25 16:10-17:20(日本時間)
アルテアのソリューションにご興味お持ちの方は、是非セミナーにて詳しい話をお聞き頂きたい。同講演はオンラインでもライブ配信される予定。