RISC-V適用プロジェクトを全方位でサポートするDTSインサイト
一方のDTSインサイトは、長年組込みソフト開発の分野でビジネスを展開。ICE/JTAG、フラッシュマイコン・プログラマなど自社ツールの提供と合わせて、Armの代理店としての幅広い活動が組込み業界では有名。DTSインサイトという社名は2017年からで、旧横河ディジタルコンピュータと言った方が通りがいいかもしれない。
SiFiveは既に中国、韓国、台湾に拠点を設けており、日本オフィスの開設も時間の問題と思われていたが、日本では拠点は置かずDTSインサイトと代理店契約という形に落ち着いた。以前、SiFiveの創業者であるKrste Asanovic氏と会話した際に「日本がネガティブという訳ではないが、RISC-Vの採用に対してはるかにポジティブな中国、韓国、台湾市場を優先している」と語っていたのを思い出す。
ともあれ、これまで日本ユーザーとしては、Web経由でSiFiveと直接やり取りするしか無かったが、今後はDTSインサイトが代理店として、SiFiveソリューションの利用について日本国内で全面的にサポートしてくれる形となった。これは日本企業にとっては嬉しい限りだろう。実際にDTSインサイトによって行われるSiFiveの代理店業務および付加サービスは下記の通り大きく3つある。
1.SiFive社のIP製品(RISC-Vベースプロセッサ)の提供
DTSインサイトは代理店としてSiFive社のIPの導入を検討、評価の段階も含めてサポートしてくれる。SiFiveのIPコアはWeb上のツールを用いて様々な構成を検討できるが、それらツールの利用や構成検討などについてもDTSインサイトのサポートを受けられる。契約についてはユーザーとSiFiveの直接契約となるが、契約後の製品保守およびサポートは日本国内でDTSインサイトが対応してくれる。
2.SiFive社のIPをベースとしたLSIデザインサービス
顧客のニーズに応じてSiFiveベース/RISC-VベースのLSI開発(ハードウェア設計)を請け負ってくれる。LSIデザインサービスはSiFiveの代理店を前提にDTSインサイトが立ち上げた新規ビジネスで、パートナー企業と連携して顧客のカスタムニーズに応える。サービスの一環として開発環境(ボード、デバッガなど)の提供やファームウェアの移植なども想定されている。
3.SiFive社のIP向けのソフトウェア開発サービス
DTSインサイトのこれまでの経験と実績の強みを活かして、SiFiveのIP向けのソフトウェア開発を包括的にサポートする。既存のプロセッサからRISC-V(SiFive)への移行に伴うソフトウェアの移植や新規開発など、LSIデザインサービスのみならずSW開発環境を含めたサービスを提供する。
なお、DTSインサイト LSI Design Service部 部長 近藤 芳人氏によると、ここ最近の国内でのRISC-Vの盛り上がりを受けて、既に同社にはSiFiveのIPに関する多数の引き合いがあるとの事。RISC-VベースのIPコアは昨今様々な製品が市場に流通し始めているが、既に300プロジェクト以上というSiFiveのチップ化実績は、手堅い日本ユーザーにとって大きな安心材料になっているようだ。またSiFiveのIPは、導入に向けてユーザー・フレンドリーな評価プロセスとそのための環境が用意されており、多くのユーザーが以下のような3つのステップで導入を進めていくという。
Step1) トライアル
- SiFive専用開発環境「CoreDesigner」の機能確認
- あらかじめSiFive側が用意した、コンフィグレーション固定のプロセッサコア評価キット一式の入手
評価キット:Verilog RTL、Xilinx ARTY A7 100T用ビットストリーム、 検証ベクタ、ドキュメント
Step2) 評価契約(基本期間:1ヶ月)
- SiFive専用開発環境「CoreDesigner」の全ての機能が利用可能
- ユーザが「Core Designer」でコンフィグレーションしたプロセッサコア評価キット一式の入手
評価キット:Verilog RTL、Xilinx ARTY A7 100T用ビットストリーム、 検証ベクタ、ドキュメント
Step3) 本契約(基本期間:1年間保守料込みサブスクリプション方式)
- SiFive専用開発環境「CoreDesigner」の全ての機能が利用可能
- Step2に対する製品実装権の取得
※画像は全てDTSインサイト提供のデータ
「RISC-V」の起こしたオープンソースISAというムーブメントは、日本国内でも急速に支持者とエコシステムが拡がっており、「RISC-V」はようやくウォッチ対象から検討対象/試行対象へと変わりつつある。RISC-VベースIPの本命製品として、日本におけるSiFive製品の今後の展開およびDTSインサイトのサポートに期待したい。