3億ドルを集めたAIチップベンチャーGraphcoreの全容が徐々に明らかに
2019年1月11日、メーリングリストに登録していたAIチップベンチャーGraphcore社からメールニュースが届いた。
メールニュースのトピックスは大きく3つ。
1.2018年12月に2億ドルの追加資金調達に成功
このニュースはTwitter(https://twitter.com/EDAExpress)でも一報を報じたが、Bosch, Dell, Samsungなど既存の投資家に加えBMW, Microsoftもラウンドに参加し、Graphcoreは計2億ドルの追加資金を調達。同社の累計調達額は3億ドルを超えた。同社は独自のAIプロセッサ「IPU-Processor」をベースに既にビジネスで収益を出し始めており、既存の投資家の評価も高い様子。新たに出資したBMWの投資担当者は、データセンターから自動運転車、音声アシスタントまで幅広く利用できる「IPU」の柔軟性の高さを指摘している。なお、Deep Mind社の創業者Demis Hassabis氏やニューラル・ネットワークの大御所Geoff Hinton氏などAI業界の有名どころもGraphcoreに出資しているようだ。
2.ラック型システム「IPU-POD」を発表、32ラック計4,096個の「IPU」で最大0.5エクサFLOPSの演算性能(FP16/32混合精度)
2018年12月にカナダで開催されたNeurIPS 2018にてラック型システム「IPU-POD」を発表した。
「IPU-POD」には「IPU-Processor」を4個搭載した「IPU-Machine」を32枚挿せる。この「IPU-POD」を32台繋げると計4,096個の「IPU-Processor」で最大0.5エクサFLOPSの演算性能(FP16/32混合精度)を実現できる。
※「IPU-Processor」, 「IPU-Machine」の構成の詳細はGraphcore社Webサイト参照(登録すると最新の製品プレゼン資料を入手できる)
超並列化された1000個以上のプロセッシング・ユニットと多量の「In Processor memory(SRAM)」を密結合させたアーキテクチャを持つ「IPU-Processor」は、マシンラーニング・フレームワークで作成した計算モデルのターゲットとして開発されたグラフ・プロセッサで、Graphcoreの提供するグラフ・プログラミング・フレームワーク「Poplar」を用いることでマシンラーニング・モデルのグラフを作成・最適化し、「IPU-Processor」上で実行できる。「Poplar」は、マシンラーニング・モデルのグラフを「IPU-Processor」上のプロセッシング・ユニットにマッピングし、プロセッシング・ユニット間の通信を制御する。
3.人材募集
Graphcoreは英国ブリストルと米国シリコンバレーにオフィスがあり、社員数は200名以上。現在ソフトウェアおよびハードウェアエンジニア、AI研究者などを募集している。
同社は2018年Silicon Review誌の選ぶ最も優れた職場の1つに選出されたという。
Graphcoreの「IPU-Processor」はマシンラーニングの学習/推論両方に適用可能で、いずれにおいても既存のソリューションの10-100倍の性能を発揮するとしている。
同社の創業者Nigel Toon氏は、Alteraに13年間勤務した後に3GセルラーモデムチップのIcera社を創業。同社を2011年にNVIDIAに売却。その後半導体ベンチャー2社のCEOを経てGraphcoreを設立している。