Synopsysがクラウドベースの設計環境を提供、クラウド上でTSMC向けデザインが可能に
2018年10月3日、Synopsysは「Synopsys Cloud Solution」を発表した。
今回の発表は、10/3にサンタクララで開催されたTSMCのイベント「TSMC 2018 Open Innovation PlatformR Ecosystem Forum」に合わせて行われたもので、「Synopsys Cloud Solution」が公にアナウンスされたのは今回が初めてとなる。
Synopsysによると「Synopsys Cloud Solution」は、Synopsysのマネジメントするクラウド環境と顧客のマネジメントするクラウド環境の両方に対応しており、クラウド・サービスとしてAmazonの「AWS」とMicrosoftの「Azure」をサポートしている。当然Synopsysのマネジメントするクラウド環境の方がインフラの面でもツールの運用性の面でもメリットが大きく、ワンストップでクラウド上のEDAツールにアクセスできるようだ。
※画像はSynopsysのWeb上のデータ
Synopsysが「Synopsys Cloud Solution」で利用できるツールとして公表しているのは下記製品群で、エミュレーション環境「ZeBu」に関してはその製品の性質上、Synopsysによる独立したクラウド環境が用意されている。
【Synopsys Cloud Solution対応ツール】※公表されているもの
・スタティックタイミング・サインオフ解析ソリューション PrimeTime
・RC抽出サインオフ・ソリューション StarRC
・フィジカル検証サインオフ・ソリューション IC Validator
・回路シミュレーション・ソリューション HSPICER/CustomSim/FineSim
・キャラクタライゼーション・ソリューション SiliconSmart
・機能検証ソリューション VCS
・フォーマル検証ソリューション VC Formal
・故障シミュレーション・ソリューション Z01X
・FPGAベース・エミュレーション・システム ZeBu
なお今回の発表によるとSynopsysは、Amazon、Microsoft、Arm、そしてTSMCと協業し、「Synopsys Cloud Solution」によるTSMCの顧客向けのクラウド設計環境を実現。同環境を利用することでTSMCの顧客はクラウド上で各種ツール、IP、技術(以下、参照)を用いたSoC設計が可能となる。TSMCはこのSynopsysのクラウド環境を自社顧客向けの設計環境として認証している。
・SynopsysのEDA/IP
・ArmのIP
・TSMCのプロセス・テクノロジ・ファイル
・TSMCのプロセス・デザイン・キット(PDK)
・TSMCのファウンデーションIP
SoC/IC設計でクラウド環境を活用する最大のメリットは、無限にあるクラウド上のマシン・リソースを使いたい時に使いたいだけ使えるという拡張性と柔軟性の高さで、Synopsysは今回発表した「Synopsys Cloud Solution」の活用例として、「IC Validator」をクラウド上の数千個のCPUコアで実行した例を紹介してる。これはSynopsysの自社製品開発のサインオフ検証の事例で、TSMC 7nmプロセスを利用した「DesignWareR PHY IP for PCI ExpressR 5.0」のテープアウトに成功しているようだ。
Synopsysは、過去15年以上にわたり顧客向けにクラウド環境を提供してきた実績があるとしているが、今回の「Synopsys Cloud Solution」の発表により、統合されたサービスとしてクラウド環境のビジネスを推進していく構えで、環境の利用研修なども含めたクラウド・ベースEDA環境導入支援サービスを提供していくという。