ARM-Mシリーズの置き換えを狙う新興プロセッサIPベンダ仏Cortus社
2016年6月22日、セールスツアーで日本を訪れていた仏Cortus社のセールスおよびマーケティングVPのDr Roddy Urquhart氏に話を聞く機会を頂いた。簡単ではあるが同社のソリューションについてここでご紹介したい。
Cortus社ホームページ:http://www.cortus.com/
Cortusはフランスに拠点を置くIPベンチャーで創業は2005年。CEOのMichael Chapman氏とエンジニアリングVPのChristopher A. Kopetzkyは、Intel,Bosch,Infineon,Synopsysなどで長年プロセッサ開発に従事していた経歴を持つ。
Cortusの提供するIPは32ビットRISC CPUで、その性能とコストパフォーマンスによるARM Cortex-Mシリーズプロセッサの置き換えを狙っている。台湾Andes Technology社あたりがコンペと言えるだろう。同社はフランス以外に韓国、ヨーロッパ、北米にも販売拠点を構えており、既に大手企業を含む複数のライセンサーによってSIMやスマート・カード向けなど9億個を超える同社IP搭載チップが出荷されているという。
Cortusのが現在提供しているIPのラインナップは下記図にある6品種で間もなく7品種目のハイエンド製品(APS29)がリリースされる予定となっている。
APS1は同社の最初の製品で後の製品と同様にハーバード・アーキテクチャー採用の32ビットRISC CPU。APS23とAPS25はそれぞれAPS3RとAPS25s+のエンハンスド・バージョンで、2014年にリリースされた新しい命令セット「Cortus v2」をベースとしている。また、FPS26も「Cortus v2」をベースとしておりハードウェア浮動小数点がサポートされている。
各コアはパイプライン段数、演算器、メモリ構成、バスインタフェース、マルチコア機能などの違いで用途別に仕立てられている。またCortusは、これら市販製品とは別に顧客のニーズに応じたカスタムコアの提供も行っている。
周辺環境としては、基本的なペリフェラルは一通り備えられており、自社開発のコンパイラ、ISS、コ・シミュレーション用のSystemCモデル、FPGAベースのプロトタイピング・ボードなどの開発環境が用意されている。デバッグ環境はEclipse,GDBのほかに、サード・パーティーのツールを利用する事もできる。
Cortusの提供する各コアは、高性能、小面積、低消費電力を謳っており、各種ベンチマークの結果では総じて競合製品のARM Cortex-M0,M3,M4を上回る結果を残している。
同社はライセンスの売り切りとロイヤリティの両面でビジネスを行っているが、その価格については顧客の要求に応じて別途相談。基本的にARMのコアより安いというのが彼らの謳い文句となっている。現状の製品はARM Cortex-Mシリーズをターゲットとしているが、今後はCortex-RおよびAシリーズをターゲットとした製品もリリースする計画のようだ。